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戸田克樹のコラム
第364話「呼気膿臭」

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2022年5月30日

肺炎で治療していた牛の呼吸様式が悪化したため先日ついに廃用出荷となりました。

肺炎牛を前にして、治療ではなく出荷を選択する場合、獣医師にはいくつか判断基準があります。
・ 努力性呼吸(頭や体を揺らしながら呼吸する)の有無
・ 開口呼吸の有無
・ 露舌の有無
・ 間欠式呼吸(吸ったあとに一瞬間が開き、ため息をつくように息を吐く)の有無
・ ずっと立っていて座らない(おそらく座ると腹圧で肺がおされるため苦しいからではないか)
・ 流涎の量
・ 投薬に対するリアクションや治療日数の長さ
などなど・・・
こうした項目を確認していき、状態次第では治療よりも出荷を優先しなければならないこともあります。月齢や畜主の希望、食欲の有無によっても変わるので上記の項目が気になっても試しに、あるいは畜主の要望で治療を実施・継続することはあります。

さらに、これらに加えて呼気膿臭の有無も重要なポイントです。これは人間の嗅覚が重要になってくるチェックポイントです。牛の鼻や口に顔を近づけて、牛が息を吐くタイミングに併せて勢いよく息を吸います。そのときにもし【化膿臭】が感じ取れたら要注意です。この化膿臭はもちろん肺から出てきたにおいです。つまり、肺の中には膿汁が溜まっていて、そのにおいが気管を通って外に出てきていることになります。肺の状態は相当悪いですし、換気能も著しく落ちていますから、体調も非常に悪いです。呼気膿臭が感じられた牛がその後元気になったケースはあまり記憶にありません。つまり、呼気膿臭は早期出荷を判断すべき重要なポイントになるということです。

もう少し肥育したかった牛でしたが、死亡というリスクを避けるため、農家さんと相談し廃用出荷という決断に踏み切りました。
普段の診察は耳(聴覚)や目(視覚)をよく使いますが、肺炎の診察には鼻(嗅覚)も重要な判断材料となります。


肺膿瘍の写真①


肺膿瘍の写真②(膿がどっさり)
 
 
今週の動画
Bovine Papillomatosis 3 牛乳頭腫症3

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