(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「脂肪壊死症についてちょっと考えていることその1」

コラム一覧に戻る

2007年9月18日


 脂肪壊死症というのは、牛さんの体内の脂肪が壊死して(そのまんまですね)、石鹸のように硬く固まってしまう病気です。繁殖母牛から肥育牛、種雄牛にまで発生します。但馬系の強い牛さんで発生が多く、月齢では19ヶ月玲以降くらいから発生が見られるようです。
 発生場所は、直腸周囲が多く、他に腎臓周囲、円盤結腸などにも見られます。脂肪壊死症がひどくなると、腸管を圧迫して便の通過が悪くなったり、腎臓が圧迫されて萎縮したりするケースもあり、気が付いたらもう助からなかった、という事例も多いのでやっかいな病気です。
 症状は、まず発見のきっかけで多いのが「しっぽを挙げていきむ」というもので、この状態ではすでに直腸周囲の脂肪壊死の固まりがかなり大きくなっていて便の通過が極端に悪くなってしまっているものが多く、通常は治療よりも出荷を選択する場合が多いです。この状態から1〜2日で死亡するケースも多いので注意してください。
 次に「食欲不振」「眼球陥凹」などが見られることも多いです。眼球陥凹というのは、文字通り目玉が落ちくぼんでしまうことです。目玉は眼窩という頭蓋骨のくぼみに入っていて、その隙間を脂肪が埋めているのですが、脂肪壊死症になると、どうも眼球と眼窩の隙間を埋めている脂肪が少なくなるようです。それで目玉が引っ込んで見えるんですね。
(つづく)
|