(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤田真千子のコラム
No.36 受胎率向上のために~いろいろなホルモン処置③~

コラム一覧に戻る

2022年6月2日

①モディファイド・ファストバック、②hCG投与による副黄体の形成
についてお話ししました。今回は持続性黄体ホルモン製剤投与と、追い移植のお話です。

③発情後5日目のルテウムデポー投与
持続性黄体ホルモン製剤(ルテウムデポー)は、受精卵着床障害や習慣性流産の予防を目的としている薬です。1回投与すると約10日間、黄体ホルモン作用を示すとされています。これも前述の2つの方法と同様に、授精後早期に投与し黄体ホルモン濃度を高めることで、胚の生存性を高める作用を期待しています。習慣性流産の場合には、分娩まで繰り返し投与する場合もあります。あまり高くない薬なので、気軽に使えて良いなと個人的には思っています^_^

④授精後の追い移植
追い移植とは、人工授精から7-8日目に受精卵移植もおこなう方法です。長期不受胎牛に対して効果があるとされており、人工授精で妊娠しなかった牛の約半数で受胎したとする報告もあります。
追加で受精卵を移植することで、胚から分泌される妊娠認識物質(インターフェロンタウと呼ばれる蛋白質)の分泌量が多くなり、受胎を助けているのではないかと考えられています。追い移植の場合は双子になる可能性ももちろんあるので、要注意です。
※胚が妊娠認識物質を分泌することで、母体の黄体退行を阻止しています。胚の成長が足りず、妊娠認識物質の分泌量が不足すると黄体退行を阻止できず、不受胎となってしまいます。

受精卵移植で用いる場合
①のモディファイド・ファストバックは使用しにくい(シダーを出し入れすることになってしまう)ので、②のhCGか③のルテウムデポーの投与が良いかなと思います。


 
 
今週の動画
オモテ(頭絡)を長期間装着 化膿したケース

|