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蓮沼浩のコラム
第697話:牛さんを捕まえる

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2022年5月24日

 何だか知りませんが、公私ともにやることが異様に多く訳わからない状態で毎日が過ぎていきます。何か抜けているのではないかとヒヤヒヤしています。

 いつも新人の獣医さんに教える時に、小生が特に意識していることがあります。それは何かといいますと、牛さんの捕まえ方になります。とにかく、この捕まえるということがしっかりと出来なければ、治療どころの話ではありません。
 実はこの技術は非常に重要なのですが、意外としっかりと説明がなされていることが少ないようにも思います。そこで今回は、小生がどのような意識で牛さんを捕まえているのか順を追って説明してみようと思います。

① 牛舎構造とパドックの状況の確認
柵の状態はどのような形状か?パドックの広さはどのくらいか?何頭の牛さんがいるのか?床はどのような状態か?

② 牛さんの状態確認
鼻輪はついているのか?オモテ(モクシ)はついているのか?角はあるのか?大きさはどのくらいか?

③ 捕まえる道具の確認
ロープはどのようなものがあるのか?引っ掛け棒や竹竿のようなものはあるのか?

 まず小生は治療する牛さんとその環境を主に上記の3項目を意識して確認いたします。そして、望診をします。とにかくこの望診が非常に重要。意外とやらない方が多いようにも思います。牛さんの体調や環境を望診でチェックすることはもちろんですが、その牛さんの気質を感じ取れるようにいつも意識しています。とにかく牛さんの状態を意識してみることが重要です。ちょっと近づいただけで興奮したり、逆に近寄ってきたり。この気質をしっかりと理解しておくことはとても大切です。一番避けたいのは、パドックに入り捕まえようとしたら牛さん全員がパニック状態になり、大運動会が始まってしまうことです。治療どころの話ではありません。
 そしてもう一つ重要な点があります。それは「急がば回れ」ということになります。パドックが広いようであれば、柵を閉じて狭くしたり、ロープを2本使ったり、竹竿などの道具を取りに行きこれらを使って捕まえたり、一瞬面倒くさいな~~と思ったことを最初から出来るかが勝負になります。
牛さんとの立ち位置の関係も重要になります。ほんの少し体をずらしただけで、牛さんの動きを止めることができます。また、たえず牛さんに対して正対しながら平行移動する歩き方も重要です。
 そして捕まえる時は、いかに早く捕まえるかも勝負になります。いつまでたっても捕まえられないという事態は避けたいですね。
 獣医さんはどうしても治療に意識がいってしまいますが、牛さんを捕まえることもプロフェッショナルでありたいと小生はいつも思っています。
 
 
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