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No.34 受胎率向上のために~いろいろなホルモン処置~ |
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2022年5月19日
なかなか受胎しない牛や絶対に受胎させたい卵がある場合、色々と受胎率向上のための処置をすることがあると思います。今回は発情後早期の黄体機能強化のためのホルモン処置についてのお話です。牛群として受胎率が低い場合は根本的な対策が必要になるので、かかりつけの獣医さんに相談してくださいね。
はじめに
胚死滅につながる原因として重要なものに、黄体ホルモン濃度の不足が挙げられています。黄体ホルモンは子宮内膜の遺伝子発現を調節することで、胚の成長を促しています。黄体期の中でも、特に発情後5~9日の早期の濃度が受胎に影響すると言われています。
黄体ホルモン濃度が低いのは、黄体からの分泌量が減少している場合や代謝速度が速くなっている場合が考えられます。高泌乳牛では肝臓に流れ込む血流量が多くホルモン代謝速度が速いため黄体ホルモン濃度が低くなりやすくなり、胚死滅が多くなるという話はご存知の方も多いと思います。
胚死滅の予防のために、授精後早期の黄体ホルモン濃度を上げる方法がいくつか考えられています。
①モディファイド・ファストバック
現場でもよく使用される方法だと思います。授精後5日目にシダーを挿入し、人工授精後19日目に抜去する方法です。期待する効果として、受胎性の向上、不受胎の場合の発情発見率の向上、再授精の受胎率向上 があります。
授精後5日目にシダーを挿入すると、速やかに血中黄体ホルモン濃度が上昇します。5日目より早く入れたらだめなのか?という疑問もあるかもしれません。排卵後早く入れすぎると自身の黄体形成が不十分になることが考えられるので、早すぎも禁物です。
また、発情前の十分な黄体ホルモン濃度も正常な卵子のために必須です。前周期の黄体ホルモン濃度が低かった場合、主席卵胞(排卵する卵胞)が長く存続・成長してしまい、卵子の老化につながります。このことから、たとえ受胎しなかったとしても、次の授精での受胎率向上が期待できます。
※モディファイドは(部分的に変更された)という意味で、元々のファストバックは授精後14日目にシダーを挿入、21日目に抜去することで、早期に不受胎を見つける方法として使用されていました。
つづく
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