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藤田真千子のコラム
No.33 好中球浸潤はどんな時に起こるのか?

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2022年5月12日

今回は、子宮内膜上皮への好中球浸潤はどんな時におこるのかという内容です。全身症状のない子宮内膜炎主体でお話していきます。
・細菌感染しているとき
まずは、細菌感染しているときです。どんな細菌でも良いわけではなく、炎症を起こす細菌は限られています。子宮内で悪さする細菌といえば、大腸菌とツルペレラ・ピオゲネス(Trueperella pyogenes)という細菌です。そのほかに、フソバクテリウム(Fusobacterium necrophorum)、プレボテラ(Prevotella melaninogenica)、プロテウス属(Proteus spp.) などの嫌気性菌もいます。これらは子宮内膜の炎症の増加およびより重篤な臨床症状と相関していると言われています。

蓄膿症になっているときは、だいたいツルペレラが関与しています。他の嫌気性菌たちと協力し合いながらお互いに心地よい環境を作って、増殖しています。排出される粘液は膿主体です。大腸菌主体で増殖している時は、膿自体はあまり多くないが悪臭がすると言われています。

その他の細菌も子宮内から採取されますが、好中球数との相関はなく、炎症は引き起こさないとされています。子宮内はこれまで無菌だと考えられてきましたが、ヒトでは近年の研究で、子宮内にも善玉菌や悪玉菌があり、子宮の中も腸内と同じようにさまざまな細菌がいることがわかっています。
難産や胎盤停滞を起こした子宮疾患のリスクが高い牛に、乳酸菌のような善玉菌をドカっと子宮内に入れたら悪玉菌を抑制したりするのでしょうか…
          
・細菌は排除されたが炎症が残っている状態
培養しても病原細菌は検出されないが、好中球数が多いという個体もいます。受胎に影響を与えるのは細菌の存在自体というより炎症の有無であるとされているので、炎症を抑えることが必要です。

・一過性の炎症反応
ポピドンヨード(2%,50ml)を子宮内注入した研究(Osawa et al.,2020)では、注入後一過性の好中球浸潤がみられたこと、注入後に子宮内膜細胞が消失しその後子宮内膜細胞の再生がみられたことを報告しています。これらより一過性の炎症反応が上皮細胞の早期再生を促進し、その結果受胎率が改善された可能性があると筆者らは説明しています。また、精液注入後にも一過性の炎症反応が起きることが分かっています。これには余分な精子の排除する作用があるとされています。

サイトブラシで確実な診断と治療ができるとよいなと思います!時間がないのでここまで…(;^ω^) おわり
 
 
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