(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤田真千子のコラム
No.32 サイトブラシの使い方

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2022年4月28日

今回はサイトブラシの使い方、評価の仕方のお話です。
<準備するもの>
滅菌したサイトブラシ、シース管カバー、スライドガラス、細胞固定用スプレー(なくても良い)、染色液(ディフ・クイック染色液等)
<使い方>
①子宮体部でブラシを外筒から露出させ、一回転させることで子宮内腔の細胞を採取する(出血しやすいのであまり押し付けず優しく転がします)
②スライドガラス上でブラシ部分を回転させながら軽く押し付け、細胞を付着させる(ブラシを引きずると細胞が壊れるので注意)
③すぐに細胞固定用スプレーを吹きかける or よく振って乾かす
④持ち帰って染色
<評価>
①まず低倍率で全体を観察し、細胞の重なりなどがない見やすい視野を選ぶ。核の変形した細胞はカウントしない。
②高倍率で有核細胞を100個数え、そのうちの多形核好中球(PMN)の割合を計算する。
(多形核好中球数/有核細胞数)×100(%)
③分娩後50日以降(種付け時期)であればPMNの割合が5%以上の場合に子宮内膜炎であると判定する。


拡大
※あまりきれいではないですが…自分で染色したものも載せておきます。

<備考>
・何個カウントするのが良いか:100個では過大評価・過小評価する可能性があるため300個を推奨する報告もありますが、臨床で使うなら100個で十分かと思います。
・侵襲性があるのか:侵襲性は最小限であり、授精後数時間でサンプルが採取されてもその後の受胎率に悪影響を及ぼさないと報告されています(Kaufmann et al., 2009)。
・リンパ球?:たまにリンパ球が多く採取される牛がいますが、リンパ球の占める割合が高くても問題なく受胎しているので気にする必要はないのかなと思っています。文献も見当たらず…まだその意義はわかっていないのでしょうか。
・発情周期によってPMNの割合が変化するのか:発情周期よるPMN%に有意差は無いとされています (Madoz et al., 2013)。※発情時、PMNは子宮内膜のより深い層に浸潤していることが子宮内膜の生検により分かっています(Pascottini et al., 2016)。これに対し、サイトブラシのサンプルはより表層から得られています。
 
 
今週の動画
Bovine papillomatosis 2 牛乳頭腫症2

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