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加地永理奈のコラム
かゆい!ハジラミ

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2022年5月11日

前回に引き続きかゆいシリーズです。

診察中の牛をじっと観察していると、フケだと思っていたものが何やら動いているのがわかりました。何の生き物か判定するため、毛ごとむしり取って持ち帰り顕微鏡で観察してみました。

正体はハジラミでした。
「ウシハジラミ(Damalinia bovis)」
ハジラミは冬によくみられます。体長1.5mm程で、何かのゆるキャラのように大きな頭が特徴です。吸血はしない昆虫で、フケや皮脂を摂食し、卵から成虫まで生涯ずっと体表に寄生しています。この大きな頭は、毛や皮膚にかじりつくために顎が発達しているからです。毛の間を活発に動き回り、爪で皮膚をかいたり大きな顎でかじりついたりするため、ウシは激しい痒みを感じます。痒みストレスのせいで、食欲が落ちたり不眠になったりします。

この牛も痒いところを柵などに強くこすりつけていたようで、一週間で禿げた範囲が広がってしまいました。畜主さんにかゆい背中を掻いてもらうと、たまらん!といったこの表情でした。

ハジラミがいるとわかったら、フルメトリンを含む外部寄生虫駆除薬をかけましょう。この駆虫薬は蚊取り線香と同じ機序で、神経に作用して麻痺させることで殺虫効果を示します。ただしこの薬も、卵にはほとんど効果がありません。卵から孵化してきたところをターゲットとするために、1~2週間間隔で2~4回は処置を繰り返すことが必要です。
また群でいると、ハジラミは接触感染でうつってしまうので、1頭別にしてあげるのが良いでしょう。ただウシにいるハジラミは基本ウシにしか寄生しないので、ヒトにうつるという心配はありません。

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