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加地永理奈のコラム

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2022年4月27日

ブユは漢字で「蚋」と書くのですね。ここ一週間で次々とブユにかまれ、ずっとかゆいままです。やられっぱなしも嫌なので、ブユについてまとめてみました!

「ブユ科(Simulidae)Black flies」


(「最新家畜寄生虫病学」より引用)

関東ではブヨ、関西ではブトとも呼ばれます。体長1~5mmで丸っこい体つきです。春から夏にかけて活動し、湿度の高い環境で活発になります。幼虫が清流でしか暮らせないため、山奥の水辺でよく観察されます。農家さんもきれいな水をひいているために、ブユの発生は多いのではないでしょうか。
蚊との共通点は、産卵のために成虫の雌のみが吸血することです。しかし蚊はストローのような長い口を血管に刺して吸血するのに対し、ブユは皮膚表面をかじって流れ出る血液を舐めとります。そのため、かまれた直後は血がにじみ出ていたり、気づいたころには小さなかさぶたになっていたりします。また、ブユは噛むときに唾液腺から唾液を入れます。かまれたあとにかゆみや発赤、腫脹があらわれるのは、唾液に含まれるタンパク質成分にアレルギー反応を起こすためです。しかし唾液には鎮痛作用の成分も含まれているため、かまれている時には痛みやかゆみをほとんど感じません。蚊のようなプーンという羽音も立てずに近寄ってくるため、気づかないうちにかまれてしまうことがほとんどです。
ブユにかまれてしまったら、炎症反応が強く出て、蚊に刺されよりも強い痒みが長く続きます。炎症を抑えるために、ステロイド(デキサメサゾン、プレドニゾロンなど)が配合された外用液を使用しましょう。抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩)も有効です。
できる対策としては、長袖長ズボンを着て肌の露出を控えましょう。私も意識して長袖を着ていますが、作業中どうしても腕まくりをしてしまい、あっけなくブユにかまれています。また、黒や紺の暗い色に寄ってくるそうです。私たちの診療着やつなぎはまさに黒色!和牛も黒色!こぞってブユを寄せ付けているみたいです…。きちんと虫除けスプレーをしようと思いますが、ブヨよけにはハッカ油の方が効果的という話も聞くのでこれから試してみます。
ちなみにブユが媒介する牛の病気もあります。ツメトゲブユ(Simulium ornatum)が咽頭糸状虫という寄生虫を媒介し、和牛の慢性皮膚病「ワヒ・コセ病」の原因になります。中国地方および九州地方において、発症は春から夏にかけて毎年繰り返す慢性皮膚病で、かゆみがあり、体の皮膚が脱毛、肥厚して象皮様になります。ただ、実際の発生は少なくあまり問題にはなっていないようですね。ブユにかまれることによるアレルギー反応性皮膚炎であるとも考えられています。

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