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松本大策のコラム
冬に痩せる? その2

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2022年4月25日

 冬場に牛さんが痩せるのは、身体をつくるタンパク質が足りないのではなく、タンパク質を身につける(タンパク同化)ためのカロリーが不足することが原因です。

 さらに言うと、せっかく吸収したのに身につかなかったタンパク質は、分解されて老廃物の「アンモニア」として処理されます。

 アンモニアは猛毒なので、肝臓で尿素に変換されますが、発生量が多くなると、血液中のアンモニア濃度が上昇します。すると、いろいろとやっかいなことが起こるのです。

 繁殖の面では、本来卵を護るために卵を包んでいる卵胞の中は「卵胞液」という液体で満たされており、卵が水に浮かんだようにして衝撃などから護られているのですが、血液中のアンモニア濃度が上昇する結果、卵胞液中のアンモニア濃度が上昇します。なんと言ってもアンモニアは猛毒ですから、卵は死んでから排卵されるので受胎しようがない、というわけです。

 また、牛さんの尿の中には、マグネシウムとリンが多量に含まれており、尿が酸性の状態ではこれらの成分はイオン化されている溶けた状態なのですが、アンモニアはアルカリ性なので尿中アンモニア濃度が上がった結果、リンとマグネシウムが結合してリン酸アンモニウムマグネシウムという塊になります。これが尿石なのです。

 牛さんの環境気温に合わせて必要なカロリーを考えないと、タンパク質の利用効率が低下してアンモニアの害による病気や障害が起こりやすくなってしまうので、このあたりは牛さんの状態をよく観察して陰毛の状態や被毛の状態、痩せてきたか、受胎率が悪くなってきていないか、などからタンパク質とカロリーのバランスをとってあげることが大切です。

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