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戸田克樹のコラム
第361話「10桁から見えてくるドラマ」

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2022年4月18日

耳標についている10桁の個体識別番号からその牛の生年月日を知ることができますよね。特に私たち獣医師は「診断書」を作成するときにその牛の生年月日を調べなければならないので、よく10桁検索を行います。診断書は重症疾病で緊急出荷をしなければいけない場合や導入牛に異常があった場合に作成することが多いので、作成する機会は少なければ少ないほどいいですが…。

さて、生年月日を調べると、その牛や畜主にまつわるドラマを感じることがあります。たとえば12/31が出生日だと、「年末に家族でゆっくりしているときにお父ちゃんがちょこちょこ牛舎に足を運んでお産の進捗状況を確認しにいったのかな」と勝手に想像してしまいます。出生地が雪国であれば頭の中には吹雪のシーンが背景として設定されていますね。
また、経産牛で短期間のうちにさまざまな家畜市場を点々としている履歴を見ると、「これまでいろいろなところを移動してきて大変だったなぁ」とねぎらってやりたくなってきます。逆に、同じ農場で何年も飼育されてきた履歴を見ると「本当に大事に飼われてたんだろうな…」と感慨深くなります。かなり遠くの県から移動されてきた履歴を見ると、なんでここから!?と思うとともに、環境の変化によく耐えたなーと感心します。

どの牛にもついている黄色い10桁耳標は見慣れたものではありますが、そこから知ることができる牛の人生(牛生?)にはやはり様々なドラマがあるように感じてしまう今日この頃です。

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