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藤田真千子のコラム
No.30 胚死滅・流産はどれくらい起きている?

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2022年4月14日

気づいたら空胎だった…あってほしくないことですが、少なからず起こることがあると思います。妊娠の失敗はいったいどの段階でどれくらい起きているのでしょうか?

<受精できているか>
適期に授精した場合、受精は高い確率(85~95%)で正常に起こります。まずは適期授精ですね。きちんとできているか不安な場合は排卵確認を行うとよいですね。
<胚死滅?>
・早期胚死滅 :普通に発情が戻るので胚死滅だと気づかないが、不受胎の多くがこれ。
受精が正常におこなわれた後、妊娠認識(授精16日後~)以前に胚が死滅した場合を言います。発情周期は延長しません。8~16日までの早期胚死滅が最も多いと言われています(下図)。高泌乳牛では授精後7日目まで死滅する確率が低泌乳牛や肉用牛に比べ高くなります。また暑熱環境では受精日から3日の間に胚死滅が多発します。
授精後5~6日の循環血中プロジェステロン(黄体ホルモン)濃度が特に受胎率に影響することが分かっています。

・後期胚死滅:発情周期は延長。
授精の16日~42日後までの胚死滅。一度は妊娠認識されるので発情周期は延長します。後期胚死滅は栄養状態や泌乳との関連が深く、分娩後の急速なBCSの低下は後期胚死滅率を増加させます。また泌乳牛は未経産牛より後期胚死滅率は高くなります。「早期妊娠鑑定では+と判定されたが、その後の鑑定ではー」という場合はこの可能性が高いです。この期間の胚死滅発生率は8~18%程度と報告されています。


(新しい子牛の科学より引用)

〇胚死滅の原因
プロジェステロン(黄体ホルモン)分泌不足、子宮の炎症、栄養状態(低栄養・高タンパク飼料過給)、代謝病・乳房炎・跛行、暑熱ストレス、各種ストレス、病原体の感染など…

<流産>
授精後42日以降(器官形成後)に発生する胎子死を流産と呼びます。牛群における発生率は一般的に乳牛で5%以下、肉牛で3%以下と言われています(この期間の中でも65日頃までの流産率が高く、早期流産と呼ばれます)。流産率がこれより高い場合は、原因を調べる必要があります。

今回は一般的にどのステージで何割くらいの胚死滅・流産が起きているかご紹介しました。農場で普段からどのステージにどれくらい起きているのか知っておくと、増えたかな?と感じたときに対策をおこないやすいかと思います。
 
 
今週の動画
【農家さんから頂いた質問について考えてみました】

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