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前村達矢のコラム
子牛の第四胃変位?捻転?痙攣疝?

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2022年4月8日

あまり獣医師としては良くはないのでしょうが、「あれは結局なんだったんだろうなあ」と体調不良の原因がはっきりとは分からず治ってしまうことも時々あるんです。

この間も、F1の子牛で「朝は元気にミルクを飲んでたけど、夕方来てみたら首を投げて横になりバタバタお腹を蹴っている」という電話があり、農場に急ぎました。

着くやいなや子牛のいるハッチを見てみると確かに稟告通りの状態で、診察では脱水、左側の肋骨にピング音が確認できました。
この時点で、腸の痙攣疝あるいは、めずらしいとは思いましたが子牛の第四胃左方変位や捻転、腸捻転あたりを疑いました。
ピングが聞こえた位置も最後肋骨に近い位置だったので胃動あるいは捻れた四胃から聞こえているのか、腸から聞こえているのか判断がしきれなかったんですよね。

ともかくまずは採血と、内科治療として腸の痙攣を抑える為にパドリニウム、捻れた可能性のある消化管の浮腫を抑える為にデキサや高張食塩を静脈注射して症状改善しないかどうか様子を見てみました。

様子見ること30分

変わらず基本ずっと横の体勢、足もバタバタ。とにかくずっと苦しくて痛そうな様子。

薬の反応無さそう、やべーやべーどうしようかと、頭を巡らせ考え、やはり第四胃変位や捻転の可能性があることからローリング法を試してみることにしました。
40kg程度の子牛だったので、幸い転がすこと自体は一人でも容易に出来ました。
ただ、やったこともなく、これで治るのかと半信半疑で、首投げるくらいぐったりする子牛を、焦りながら、1人ハッチの中でゴロンと転がす。
周りに誰もいなくて良かったと思うような状況でした^^;

捻れや位置を整復するイメージで5分程かけての全力の1回転。
すると、明らかに子牛の様子が落ち着いたんですよね。もしかしたら、薬の影響もあったかもしれませんが、やはり四胃が移動してかつ捻れていたのではないかなと思っています。そこから1時間様子を見てると足のバタつきはなくなり、普通に立つようになり、次の日の朝にはミルクも元気に飲んだそうでした。

ちなみに、後日血液検査をみてみると電解質が少し下がり、Ht44と脱水もありました。
成牛の第四胃変位っぽい結果ではありましたが、実際に子牛の身体の中では何が起きていたのかははっきりとは分かりませんでしたね、、
なにはともあれホッとする1件でした。

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