(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第358話「カメラでお産の介助が減った???」

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2022年2月21日

22:10 戸田「今日は早く寝て、残りの仕事は朝はやく起きてやろう。おやすみー」
23:00 牧場A「先生、分娩始まって2時間経つんだけどまだ生まない。しかも粘液が赤いから胎盤剥離してるかも。」
戸田「むにゃむにゃ…。すぐいきますね!」
23:40 無事にお産終了
00:05 帰宅
00:15 戸田「さて、寝るか」
02:20 牧場B「先生…子牛がでてこなくて。おしりから来てるんです」
    戸田「むにゃ・・すぐいきますね!」
02:40 戸田「完全に臀位(おしりから出てこようとしている)やんけ!!!!(汗)」
03:50 無事に整復しお産終了
(到着時ふるえるほど寒かったのに気づけば汗だくで袖もまくっていました)
04:10 帰宅
「…」(意識もうろうでベッドイン)

ということで、最近は全然なかった夜間のお産が立て続けにやってきてヘロヘロになっております。牧場Aでは最近、牛舎内にカメラを設置していました。こちらは息子さんが正式な後継者となっておじいちゃんと一緒に牧場の牛の管理を積極的に行っているところです。息子さんはまだ20代ですが、すごく熱心でよく働きます。頭数も順調に増やしており、私も将来が楽しみです。そんな牧場Aの息子さんが、お産の介助をしているときに「カメラを設置してから、お産の介助が減って、ここ最近は自然分娩ばかりだったんですけどね~」と言っていたのです。む?と思い、よくよく話を聞いてみると…

【カメラ設置前】
お産の兆候があったら、その母牛が見える位置で観察を続けていた。そして数時間待っても子牛がでないときは介助に入っていた。このときは介助することが結構あった。ただし、難産ではなく、介助すればすぐに生まれるケースが多かった。
【カメラ設置後】
お産の兆候があったらスマホでこまめに映像を確認するが、牛舎にはいかない。映像を見ていると、そのまま自然に生まれてくることが多い。そしてちゃんと母牛もすぐにリッキングをしてくれる。

とにかく、カメラを設置してから介助が減ったそうなのです。もしかして、これまでは人間の視線を感じて警戒してしまい、落ち着いて分娩に集中できていなかったのかもしれません。カメラを設置したことで「介助の機会が減る」という思わぬ効果がこの牧場にはあったようです。もちろん、胎位失位や産道異常などで難産になった場合は介助が絶対に必要ですので違和感を覚えたら産道に手を入れるなどして確認をすることが重要ではあるのですが、「人の目がない」ということもお産には意外と大切なことなのかもしれないなですね。ポロっとこぼした農家さんの一言にはっとさせられた戸田なのでした。

とりあえず睡眠は非常に大事なので、皆様も夜はしっかりと寝てくださいね(笑)

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