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戸田克樹のコラム
第357話「ミルクも治療もシンプルに」

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2022年2月7日

 先日、久しぶりにひどい下痢になりました。第3波(トイレにかけこむこと3回目)を終えてもお腹はずっと「ぎゅるるるるるうぅぅ…」とうめき声をあげていました。まさかどこかでクリプトスポリジウムに感染したのか?と思ったのですが、結局原因はわかりませんでした。下痢になっても元気いっぱいの子牛はいますが、その一方でまったく元気がなくなる子牛もいます。そんな牛は相当な腹痛と戦っているのでしょう。身をもって激しい下痢のつらさを感じ、1日でも早く治してあげなければいけないと改めて思った次第でした。

 さて、スタッフさんや農家さんが子牛にミルクを与える牧場では、下痢の治療などでミルクに生菌剤などを混ぜる機会は多いかと思います。ミルク給与は毎日行う作業ですし、少し体調が悪くてもちゃんと飲んでくれる子牛は多いですから、混ぜて飲ませるという方法は効率もよいです。ただ、ここで気を付けていただきたいのが、混ぜるものはできるだけ少ないほうが良いということです。代用乳はそれぞれのメーカーさんが推奨している給与マニュアルがあり、「お湯〇Lに対し△gの粉末を溶かす」、もしくは「粉末△gに対して◇倍のお湯で溶かす」といったような文章が記載されています。これは、そのやり方が一番吸収率よく、消化管への負担も少ないという説明でもあります。心配になるあまりにたくさんの種類の生菌剤や添加剤を同時に溶かして給与してしまうと、ミルクの濃度も変わってきますし、それらを受け止める四胃や小腸などの消化管にも影響がでてしまう可能性があります。たくさんの添加剤が混ざったミルクが長期間給与された場合、消化管粘膜がダメージを受けてしまうかもしれません。

 「牛の状態をよくしたい」という思いで添加されたものが負担になってしまうことがないよう、ミルクに溶かすものは種類を最小限に絞ることをおススメします。嗜好性がよいものは飼料にふりかけて「飲むのではなく食べてもらう」というように摂取方法を変えるのもよいかもしれません(第一胃で効果を発揮した方がよい生菌剤はミルクに混ぜてしまうと第二胃溝反射によって直接四胃に流れてしまうため、添加の努力が報われないこともあるので注意が必要です)。あれもこれもとやっていくとどれが効いているのだかわからなくなることもありますよね。治療もそうですが、ミルクもなるべくシンプルなほうが好ましいのではないでしょうか。

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