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笹崎直哉のコラム
再検査の重要性 その3~具体例~

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2022年2月8日

有酸素運動が体にいいと聞き、先日山を走ること(トレイルラン)が趣味の友人にお願いして、一緒に山を走ってみました。しかし実際に走ってみると後悔しかありませんでした。酸素は薄いし、登ったり下ったりの繰り返し、さらに足場も悪く、とにかくいろいろと大変でした。「なんで歩いて登ろうと思わなかったのだろう。というか室内のランニングマシーンでも良かったじゃん」と山頂に着いてから思いました。

さて前回と同様に再検査の事例をみていきましょう。今回は1項目でなくペアで項目をチェックしています。今回はCPKとAST(GOT)です。まずそれぞれの項目について紹介しますね。

・CPK
これは「クレアチンキナーゼ」と呼ばれる筋細胞中に存在する酵素です。筋細胞が破壊されるケース、例えばスリップによる股裂き(内転筋断裂)、挫創、筋炎(打撲)などで上昇します。跛行を呈す牛さんはこの数値が上昇していることが結構なケースであります。先生によりいろいろな見解がありますが個人的には300 U/Lを超えると異常値と判断しています。物理的な外傷等以外でも炎症性の腸疾患、特に重症例でCPKが高値になることがあります。これは腸平滑筋の損傷からきているのではないかと考えています。

・AST(GOT)
CPK以外にも筋細胞の損傷具合を判定するのに「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」、ASTがあります。一般的には肝機能評価のマーカーとされていますが、実は筋細胞にも含まれています。よって普段はASTが高値の場合①AST単独で高値なのか➁CPKもつられて上がっているのか③γ-GT(γ-GGT)も上がっているのかを意識して結果を考察しています。

では具体的に症例をみていきましょう。

起立不能であるうえに起立欲も消失している肥育前期の牛さんを診察し、血液検査を実施しました。
CPKとASTが著増していたため、同居牛に乗駕されたりなどの事故で脊椎、筋組織を損傷し起立不能となったのではと判断し、栄養点滴を含め消炎剤を投与しました。

数日経過しても自力起立せず回復傾向になかったので、8日後に再検査したところ基準値範囲内ではありませんでしたが、数値に改善がみられました。この時点で「よし、回復傾向にあるぞ!!」と確信し、再診を設けながら治療を継続しました。

すると1ヵ月ほど経過したら、見事自力起立できるようになりました。後肢球節のナックリング、それから腰萎を呈していますが良い経過をたどっています。

長くなりましたが外貌所見上、変化が見られないときは再検査というアクションはとてもおススメです。

つづく

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