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前村達矢のコラム
首下がりの謎に迫る、、、

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2022年1月22日

皆さん、特別具合が悪いわけでもないのに首を下げている牛をみたことはありますか?よく熱が出たり、息苦しかったりする子が頭を下げて(そしてよどんだ表情で泣)いる子はいますが、どうもそうではなさそうな牛を診たので今回紹介したいと思います。

まず外貌はこんな感じです。


(ただよう負のオーラ)

はじめは、V字に曲がった気道の谷の部分に炎症性の滲出物が溜まっているために頭を下げて少しでも呼吸を楽にしようとしているのか?注射や採食時・保定時などに柵等にぶつけたことで首の筋肉である僧帽筋等に炎症や硬結が起きて痛みがあるのか、あるいはうまく収縮できていないのか?など考えたのですが、農家さんと話しをしつつ状態をチェックしているととある発見がありました。

それが次の写真!

旅から戻ってきた松本獣医師と牛さんを下から撮ったものです。一見するとわかりづらいかもしれませんが、下顎が短いために下の歯が上顎の歯床板よりもかなり引っ込んでいるんです。要するにしゃくれの逆、、、逆しゃくれですね。
はっきりとはわかりませんが、先天的に下顎の筋肉や腱が短くなっているためにこのような状態になっているのではないかと推測しています。(実際にこっそり下顎を引っ込めたりしゃくれたりしてみましたが顎の筋肉をよくつかいました。このことにより、はじめに予測していた肩こり筋である僧帽筋の問題はなさそうなことにも気づけました(笑))

この子には現在、ナックリングやねこあしの治療に用いるタンパク同化ホルモンを使用しています。結構都合よく、伸びてほしいところの筋肉や腱の伸張がみられる処置なので、この子も頭を上げて過ごせるようになれればいいなあと期待しています。

とはいえ諸々あくまで推察でまだまだ分からない状況なので、同じような牛さんを知っている方いたら是非教えてください。

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