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藤田真千子のコラム
No.18 タンパク同化ホルモン剤使ってみました②新生子ナックリング

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2022年1月20日

②新生子ナックリング

ナックリングは決して少なくない疾患で、お困りの方も多いのではないかと思います。
その程度により、軽度~重度まで以下のように分類されます(写真)。

軽度:歩行可能だが、蹄の後方が浮いている
中等度:歩行可能だが、蹄壁と地面の角度がほぼ垂直
重度:蹄壁と地面の角度が90℃を超える、蹄による歩行は困難、球節や繋・前膝で歩行する

軽度なものは、曲がった関節を毎日伸ばしてやることやテーピングで治ることもあります。中等度~重度で、関節を伸ばせる場合は、ギブス固定が選択されています。関節を伸ばせないほどの重症例では、腱切断術が行われています。

タンパク同化ホルモン剤は、軽度~重度の症例に対し使用しました。量は大人が使用する容量で、1~2回、2週間程度間隔をあけて使用しました。5症例中3症例では、アミノ酸製剤も併用しました。

① <軽度>両前肢球節ナックリング:1回アミノ酸製剤とタンパク同化ホルモン剤使用、治癒。
② <重度>両前肢球節・前膝ナックリング:タンパク同化ホルモン剤1回使用、改善せず、腱切断術を実施。ギブスによる褥瘡ができてしまい廃用となる。
③ <右中等度、左重度>両前肢球節ナックリング:まずギブス固定し、右は治癒。左は改善せずタンパク同化ホルモン剤を2回使用、治癒。
④ <重度>両前肢球節ナックリング:1回目はアミノ酸製剤とタンパク同化ホルモン剤使用、2回目はタンパク同化ホルモン剤のみ使用、治癒。
5症例目は直接見ていないので、詳しくわかりませんが、アミノ酸製剤とタンパク同化ホルモン剤投与で治癒したそうです。

まだ症例数は少ないですが、治癒した症例では投与から1週間以内に効果がでています。

球節だけでなく前膝まで曲がってしまったナックリングに対しては、難しいかもしれません。現在、鹿児島シェパードでそのような子牛をアミノ酸製剤とタンパク同化ホルモン剤で治療しているので、結果を楽しみにしたいと思います…! 

つづく
 
 
今週の動画
「【Access Time】早期発見、早期治療に向けた取り組み その2」

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