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蓮沼浩のコラム
第687話:油脂と疾病予防 その10

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2021年12月28日

 気が付いたら年末です。毎年思うのですが、滅茶苦茶時間が過ぎるのがはやい!!!すぐに正月も終わり、たぶん気が付いたら2月になっているでしょう・・・。とにかくやるべきことを粛々とやっていきます。

 最近よく「カーボンニュートラル」という言葉を耳にします。これは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味しています。そしてその流れの中から日本政府は、2020年10月に「温室効果ガスの排出を2050年までに全体としてゼロにする」と宣言しています。

 ●世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
 ●今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

 これは2015年にパリ協定で採択された世界共通の長期目標になります。今後世界は大きくこの流れに沿って進んでいきます。TPP11と同じで、もうすでに舵はきられています。その影響から、自動車業界をはじめさまざまな業界でこの流れを意識した取り組みが行われているように感じます。

 では、小生の所属する牛さんの業界はどうか・・・

 昔から牛さんのゲップに含まれるメタンが地球温暖化に影響しているといわれています。実際に反芻家畜からのメタン発生量は地球上での全メタン発生量のうち16%を占めています(1992年)。そして、農業分野の中での全メタン発生量のうち、25.6%を占めています(2014年)。今後ますます「カーボンニュートラル」という概念が広がることから、反芻動物由来のメタン発生の低減は間違いなく重要な課題として取り上げられてきます。

 小生のような田舎の鼻糞獣医師にはスケールが大きすぎてどうしたらよいのかさっぱりわかりません。しかし今回ω3脂肪酸について調べていると、α-リノレン酸を多く含むアマニ油脂肪酸カルシウムの飼料添加がメタンの発生を抑制する研究報告が非常に多く出ていることがわかりました。乾物摂取量あたり1%添加することで4.8%のメタン発生量低減効果があることがわかっています。また、多くの研究から飼料節減効果があることもわかっています。
 LCA(ライフサイクルアセスメント)という指標を用いて生産段階(飼料生産・飼料運搬・飼養管理・堆肥化・家畜)を分析すると、地球温暖化に対する家畜の反芻における寄与度が41.2~45.5%、飼料生産および運搬における寄与度は41.1~44.4%という報告があります。寄与度の高いポイントを少しでも抑えることができる手段がすでに発見されていることは非常に大きなポイントです。
 アマニ油脂肪酸Caの添加による反芻由来のメタン低減効果と濃厚飼料節減の効果は今後今まで以上に注目されてくると思っています。
 
 
今週の動画
「重大疾病を見逃さないために~持続挙尾編~」

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