(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第355話「可視粘膜とは何ですか」

コラム一覧に戻る

2021年12月20日

もういくつ寝るとお正月です。
ええぇぇぇェェーーーーーー!!!!!!!!!!( ゚Д゚)

「可視粘膜蒼白」という用語を聞いたことがありますか。長期の栄養不良、造血機能の異常、鉄不足、大きな(もしくは持続的な)出血によって貧血状態に陥ったことにより、可視粘膜が白くなった状態を指します。

可視粘膜とは
読んで字のごとく「視ることができる粘膜」ですね。具体的には眼瞼結膜、口腔内粘膜、直腸粘膜、メスであれば膣粘膜がそれに該当します。私たち獣医師も、診察の際にはこれらの粘膜の色を見て貧血かどうかを確認します。

①うすいピンク色をした眼瞼結膜

②貧血で白っぽくなった結膜

貧血の原因は先に示したようにいろいろとありますので、そこから血液検査をしたり、顕微鏡で血液塗抹を見てみたり、餌の内容をチェックしてみたりして探っていきます。

・バベシアなどの原虫感染によって赤血球が破壊されたことによる貧血
・クロストリジウム感染によって腸管内で多量の出血が起きたことによる貧血
・亜硝酸塩中毒によってヘモグロビンが変性した結果起こる貧血
・先天的に赤血球が脆弱(バンド3欠損)、もしくは止血系統に異常があり(第13因子欠損)、持続出血が起こった結果生じる貧血
・牛伝染リンパ腫発症によって造血機能に異常が生じた結果起こる貧血
・赤血球の材料となる鉄が欠乏したことにより起こる貧血
・腎機能異常によって生じる貧血(腎臓では「エリスロポエチン」という赤血球産生を促進するホルモンがつくられます。腎臓が病気になると、このホルモンの産生量が減るため赤血球が減ることがあります)

など、貧血にはさまざまな病気の可能性が潜んでいます。ですから、できれば遭遇したくない状態のひとつでもありますね。だからこそ、早期に発見することが重要です。体調が悪い牛の状態をチェックする機会がありましたら、ぜひとも「可視粘膜」の状態まで見てみることをおススメします。

|