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前村達矢のコラム
クリプトスポリジウムについて色々と①

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2021年12月17日

ここ最近、クリプトスポリジウムを原因とする下痢に悩まされています。何度かシェパードのコラムでも取り上げられていますが、改めて本当に厄介な病原体だと感じています。

まずは簡単に症状について紹介します。典型的なのは、生後10日前後の子牛に発症し前日までは良いうんちをしていたはずがいきなり飛ばすような水下痢をしてしまうやつですね(症状に心当たりがある場合は気が進まないと思いますが一度検査をお願いするのもよいと思います)。この症状が数日続いたり、コロナやロタなどのウイルスやその他の細菌との混合感染が起きてしまうと、重篤化し重度脱水を起こし衰弱してしまうこともあります。

ただ、その症状以上に厄介なのがクリプトスポリジウムの感染力の強さや感染後の対応の難しさ、そして清浄化だと考えています。

まずは感染力の強さについて。クリプトスポリジウムは、オーシストと呼ばれる虫卵がたった数個身体に入るだけで感染してしまうと言われています。しかも、ヒトでは感染者1人が排泄するオーシストの数は10の10乗個(なんとその数100億個!)とも言われているので、ほんのすこしの糞便が感染の元になってしまうと考えられます。

また、感染後の対応の難しさについてですが、抗生物質や多くの殺菌に対して抵抗性を示すだけではなく、元々身体にそなわる防御機構である免疫に対しても強いのです。というのも、クリプトスポリジウムは特徴的な寄生の仕方をし、小腸の微絨毛と呼ばれる構造の中(細胞内だけど細胞質よりは外側)に住みつくと言われています。この寄生部位に対しては免疫応答がしづらく、抗体などに対してもある程度の抵抗力があると考えられます。

とここまで、困ったあまりに敵であるクリプトスポリジウムをある意味誉めちぎってしまったので、次回はもっと前向きに有効と思われる対策等についてお話できればと思います。

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