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加地永理奈のコラム
第四胃変位の診断②

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2021年12月15日

・触診
左方第四胃変位がおきている牛の最後肋骨に手を押し当てると、その裏に手が入り込むことができてしまいます。これは、第一胃と肋骨との間に第四胃が入り込み、肋骨と第一胃の間に本来であればあるはずのない隙間ができてしまっているためです。通常の牛では充実した第一胃が肋骨を押すように大きく存在するため、ここに手が入り込むことはできません。採食量が落ちた、乳量が落ちた、という母牛がもしいたら、簡単にできるのでやってみてください。

・血液検査
第四胃変位の診断には血液検査も行います。
四変がおきると、第四胃の内容物がそれ以降の小腸にいかない通過障害が発生します。すると胃酸(HCl)は消化管から吸収されず、血液中のClが低下し低Cl血症となります。また酸性のHイオンも吸収できず、体がアルカリ性に傾く代謝性アルカローシスとなります。
飼料摂取不足、通過障害による吸収不足は血中のカリウム、カルシウム濃度の低下にもあらわれます。牛が食べる飼料にはカリウムが多く含まれているため、四変でエサを食べない牛では低カリウム血症となります。低カルシウム血症は、四変が起きやすい分娩後の時期に乳生産が増え体からどんどん抜けていくことも影響しています。カルシウムは筋肉を動かすもとでもあるため、低カルシウムが原因で第四胃の動きが悪くなり四変になったとも考えられます。
眼球陥没など脱水の症状があらわれている牛では、それをヘマトクリット値(血液の濃さ)などで確認することができます。
四変に限らず、血液検査は牛の状態を把握するための重要な手がかりとなります。

以上、第四胃変位と診断するポイントをいくつかご紹介しました。重症度に関わらず、はっきりとピング音が聞こえ診断しやすい牛もいれば、なんとなくエサ食いが悪い、乳量が低いといった牛もいるようです。そういった牛も見逃さないよう注意していきたいと思います。

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