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加地永理奈のコラム
OPUでホルモン剤を使う

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2021年12月22日

OPUではホルモン剤による処置を行わずにできることが大きなメリットとしてあります。しかし私たちがOPUを行う際、卵胞刺激ホルモン(FSH)の投与をOPUの48時間前にお願いしている場合があります。今回はその理由についてお話いたします。
FSHとは、脳の下垂体という場所から分泌されるホルモンで、FSHは卵子のまわりをつつむ顆粒層細胞に働きかけ、卵胞を大きく発育させます。このFSH製剤をOPU前に投与することにより、卵巣にある小さい卵胞たちの卵胞液が増えて大きくなり、エコーでくっきりと描出され吸引しやすくなります。卵胞のサイズが2mm以下だと針先より小さいため吸えないのですが、それがFSHにより5-10mm程度の吸いやすい大きさになります。卵巣にある卵胞の個数が増えるわけではありませんが、実質的に吸引できる卵胞が増えることになります。
そしてその吸引した卵子を顕微鏡で観察すると、FSHにより卵子のまわりを保護する卵丘細胞がしっかりと何層も付着していることが確認できます。つまり品質の良い卵子の割合が増えていると言えます。
さらにはその後使える受精卵になる確率(胚生産率)、そしてその受精卵を移植して受胎する確率(受胎率)まで、FSHによりあがることが報告されています。
ただ、FSH投与により回収される卵胞液の量が増え粘稠度が高くなり、顕微鏡で観察するためにフィルターで濾すときに手間がかかる印象があります。またホルモン剤の反応にも個体差があります。しかしそれ以上に利点が多く報告されています。投与量は、5AU、10AU、または3AUを2回などやり方もいろいろあるので、OPU前に一度このFSH投与についてご相談できればと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。

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