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加地永理奈のコラム
第四胃変位の診断①

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2021年12月8日

第四胃変位は、第四胃の運動性が悪いときガスが貯留して風船のように膨らみ、本来お腹の真下あたりにあるべき第四胃がガスに引っ張られるようにして、お腹の左または右側に移動してしまった状態をいいます。省略して四変(よんぺん)と呼ばれる病気です。こうなると、第四胃の内容物がその先に移動できず様々な症状が出てきます。分娩後1か月以内の乳牛に発生することが多い病気ですが、肥育牛でも散発的に発生します。今回はその診断方法についていくつか紹介しようと思います。

・症状
第四胃変位の主な症状は、食欲不振と乳量低下です。第四胃が正常な位置から移動してしまうことにより、食物の移動が滞り、エサをだんだん食べなくなる、急に食べなくなる、といった症状があらわれます。採食量の低下は、糞便の量の低下でも確認することができます。またエサを食べる量が減ると、エネルギー不足により乳量も減少してしまいます。体温や心拍、呼吸数はさほど変わらないことが多いようです。重度症例では脱水がみられることもあります。

・聴診をする
四変では聴診により独特の音が聞き取れます。「キンキン」という金属を叩く音(ピング音、有響性金属音)です。食欲不振の牛がいるとき、この音が聞こえる場所がないか、肘のあたりから膁部にかけて念入りにチェックします。ピング音がしたら、その下あたりを揺らすと「シャバシャバ」という四胃内の胃液の音も聴取できます。また「ゴボゴボ」という音にも注意が必要です。これは溜まったガスが液体の中を抜けていく音である可能性があり、四変が起きていることがあります。ただし、音がしない場合でも四変が起きている可能性があることがあります。牛の左側に聴診器をあてると、本来であれば「グググ」という第一胃の動く音が聞こえるはずです。それが聞こえない場合、第一胃と聴診器の間に第四胃が入り込み防音材となってしまっていることが考えられます。

つづく

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