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加地永理奈のコラム
子宮脱の母牛でOPU②

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2021年12月1日

子宮脱をおこした母牛でおこなったOPUについて、前回のコラムでは温度、風、紫外線の対策をご紹介しました。
OPUをおこなう際には保定も大切になります。OPUでは卵巣に針を刺して卵子を吸引します。このとき牛がイヤイヤとお尻を振ってしまうと、卵巣と針先がずれてしまい上手く卵子を吸うことができません。また動いた針先で卵巣にダメージを与えてしまいます。そこでA農家さんが用意してくださったのがこちらです。

枠場と牛の間の隙間を埋めるため、タイヤに加え、ワラを詰めた袋を用意してくださいました。前回コラムでご紹介した手作り保護材に続いて、身近にあるものを用いたA農家さん独自の創意工夫により、最適な環境でOPUを遂行することができました。

また栄養面のケアとして、OPU前にニンジンを給与してくださっていました。ニンジンにはオレンジ色の色素成分であるβカロテンが豊富に含まれています。βカロテンは、口から入ると小腸から吸収されビタミンAに変化します。そして、卵胞の発育を促す成長因子(IGF-1)の血中濃度を増加させること、主席卵胞の排卵を促進することがわかっています。今回のOPUでも、ニンジン給与により卵胞の発育が促され、採取した卵子の数や質が向上したのではないでしょうか。

こうした農家さんのご協力のおかげにより、こちらのOPUの胚生産率は4割と好成績をおさめることができました。これからもOPUの成績が向上するような手技、環境整備、給与するエサの内容等を模索していきたいと思います。

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