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加地永理奈のコラム
子宮脱の母牛でOPU①

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2021年11月24日

シェパード関東では週に1回OPUをおこなっていますが、今月からわたしたち新人獣医師がOPUを担当しています。毎回緊張しております。
OPUを行うメリットとして、分娩後数週間でできること、繁殖が見込めない母牛でも可能であること、などがあります。先日のOPUでは実際に、子宮脱を発症した母牛で行うことができました。その母牛は9月末の分娩時に難産の後、子宮が反転し脱出していたためすぐに整復をおこないました。しかし子宮脱のあとは子宮内膜の損傷や汚染により、その後の繁殖が見込めないことがあります。そのため今回OPUすることとなりました。その農家さん(A農家さん)がOPUにむけた事前準備を徹底してくださったので、ご紹介させていただきます。
まずテント張りです。OPUでは体内の卵巣から針で直接卵子を吸い出します。このとき外の環境が寒いと、か弱い卵子は体内にいた時との温度差にダメージを受けてしまいます。また体内から外に出たときに紫外線を浴びてしまうと、これも卵子にダメージを与えてしまいます。これらを防ぐために、特にこの冬の時期に必要な対策がテント張りです。A農家さんはOPUをする枠場の周りを、写真のように脚立や大きなシートを用いて丁寧に囲ってくださいました。

当時外気温は12℃程しかありませんでしたが、このテントの中でヒーターをつけると20℃以上を保つことができました。
また、A農家さんが独自に用意してくださったのがこちらです。

OPUで吸引した卵子は、細いカテーテルを通り50mlチューブの中に集められます。このときに温度や風、紫外線で受けるダメージをなくしたいというお話をしたところ、カテーテルを包む保護材を手作りで用意してくださいました!
こうしたA農家さんのありがたいご協力があり、温度、風、紫外線に対して万全な備えでOPUを行うことができました。

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