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戸田克樹のコラム
第353話「褥瘡について再考②」

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2021年11月22日

座ったままでじっとしていたい、ということは起立欲が低下しているといえます。立つときに痛いから立てないのか、倦怠感が強いからじっと座っていたいのか、牛の気持ちはわかりませんが、その状況によって考えられる病気は変わってきます。

まず「痛み」に注目してみましょう
私たちも年齢を重ねると膝が痛くなり、立ち上がる瞬間に「あいたたた…」と口からこぼれてくることがありますよね。牛の場合は体重がかなりありますから、痛みがあれば立ちたくなくなってしまうのもわかります。肥育牛の足の痛みとくれば、代表的なのはやはり蹄葉炎でしょう。蹄葉炎の場合、過長蹄や背弯姿勢、前膝をついたままの姿勢、ロボット様歩行といった特徴的な姿勢や歩行様式を示しますから、褥瘡が見られたらまずは蹄葉炎になっていないかをぜひ確認してあげてください。


過長蹄


背弯姿勢


前膝をついたままの姿勢

次に「倦怠感」に注目してみましょう
体がなんとなくだるい…そんなとき私たちは「肝臓が弱っている」と思うことが多いですよね。牛も同じです。倦怠感が強いということは肝臓がダメージを受けている可能性が高いです。そして牛の場合は肝臓のダメージは慢性的なルーメンアシドーシスやそれによって生じるエンドトキシンが大きく影響しています。ということは、倦怠感があるかもしれない=肝機能が弱っているかもしれない=ルーメン細菌叢のバランスがおかしくなっているかもしれない!というような考え方ができるのです。もし褥瘡のある牛で蹄葉炎が見られなかった場合は血液検査を行って肝臓の数値を確認したり、アシドーシス改善のためにエサのやり方や添加剤の見直しを行ったりする必要がでてきます。

褥瘡はそのものを治療するのではなく、褥瘡ができた原因をつきとめることが大切です。イソジンをかけたり抗生剤を投与したりする前に「なぜ褥瘡ができているのか」について考えてみることをお勧めします。

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