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戸田克樹のコラム
第352話「褥瘡について再考①」

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2021年11月8日

気づけば今年も数えるほどですね。時の流れについていけていません…。

皆様の牧場にこんな牛はいませんか?

これはただの傷ではなく、褥瘡(=床ずれ)です。「イソジンを塗っておけばよいか」、あるいは「抗生剤を打っておけばよいか」とよく聞かれます。もちろん、そうした処置をすることで細菌感染を防ぐことはできるかもしれません。しかし、この褥瘡は「患部そのものをケアする」という対応では不十分なのです。その理由を考えてみましょう。

なぜ褥瘡はできるのか
人間でも寝たきりになると簡単に床ずれができますよね。だから定期的に寝返りをさせる、あるいは細胞が傷まないよう保湿クリームなどを定期的に塗るといった対応が行われています。では、なぜこうした対応が必要なのか。それは、同じ姿勢を続けていると、体の特定の部分に長時間負荷(体重)がかかるためです。その重みによって細胞が圧迫されるだけでなく、血流が途絶えるために細胞死が起こりやすくなります。その結果、負荷のかかった部分に床ずれが起こるのです。つまり、褥瘡ができているということは、体位変換(立ったり座ったり)が十分にできておらず、ある部分に慢性的に力が加わり続けているということを意味しています。

牛の褥瘡ができやすい位置をみてみましょう。たいていは写真のように後肢の膝部に生じます。飛節に生じることも多いですね。ということは、ここに長い時間体重がかかってしまっているということになります。ここに体重がかかる姿勢といえば伏臥位です。

この姿勢だと、どうしても片方の足に体重がのってきます。

座っている時間が長く、そのためにある一部にずっと体重がのってしまい、その結果として褥瘡が起こっていますので、消毒などで褥瘡だけをケアしてもあまり意味がありません。大切なのは「長時間伏臥をしている原因」を探ることです。では、座ったままになってしまう牛はどのような問題を抱えているのでしょうか。

つづく

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