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戸田克樹のコラム
第351話「陰部切開がはやっています」

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2021年10月19日

お産に関わるコラムが続いていますね。それもそのはず、シェパードでは分娩が最近多いからです。夜間のお産も増えています!農家さんも寝不足です!!(笑)

さて、初産牛の難産で最近目立つのが「陰部切開を要する難産」です。本当に多いんです、最近…。

子宮頸管は十分拡張していて、なおかつ、子牛の肋骨や母体の骨盤へのダメージが生じるようなものではない場合、経膣分娩を行いたいですよね。しかし、なぜか最後の出口である陰門の拡張が不十分で子牛が出せない、というケースが最近多いのです。そして、その結果…この陰部切開の実施例が目立つようになってきました。

陰部切開のやり方はいたってシンプルです。左右それぞれ2か所(だいたい9時、3時方向)に剃刀、メス、はさみなどで皮膚を切開するだけです。

※剃刀やメスで子牛を誤って切ってしまう事故が起こる可能性があります!処置時は慎重に切開を進める必要があります!

切開する長さは子牛の大きさによって変わります(実施者の経験に頼るところが大きいです)。この切開によって陰門の直径をある程度広げることができますので、子牛を無事に出すことができるようになります。あまり広く切りすぎると、感染のリスクや母体へのダメージが大きくなってしまいますので、慣れないうちはある程度切開して少し牽引してみて、それでもまだ狭いと感じたら再度切開して広げる、というやり方もありかもしれません。そうやって経験を積むうちにだんだんと「このサイズならこれくらい」という感覚が身についてきます。もちろん切開後は必ず縫合まで行わなければいけませんし、非吸収糸で縫合した場合は抜糸も必要ですね。手間は増えますが、陰部切開は子牛も母牛も無事だというパーフェクトな分娩を実現させるために必要な処置のひとつだといえます。

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