(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第350話「お産に重要なのはパワーではなくなりました」

コラム一覧に戻る

2021年10月12日

ここ鹿児島の田舎町、阿久根でもすでに朝晩が冷えてきました。昼間の発汗量も明らかに減少してきました。過ごしやすくなってきましたね~。

ところで、30kgの子牛のお産に立ち会うと「えらい小さいなー」と思ってしまいます。でも、数年前までそれが普通でしたよね。昔はどんなお産でも「心配だから」と呼ばれることも多く、「難産介助」ならぬ「安産介助」であるケースも多かったですね。しかし、最近は生まれてくる子牛がどんどん大きくなってきたこともあり、呼ばれたら本当に難産であることが多いです。大きい子牛が生まれることが多くなった影響もあるのですが、滑車を持っている、もしくはお産のときは必ず滑車をセッティングしておく、という農家さん(あるいは牧場のスタッフ)も珍しくなくなりました。

この滑車、実に頼もしい道具です。高齢な農家さんでもスルスルと引くだけでいいですし、屈強な人員を揃えなくても過大子牛を引っ張り出すことができます。あれば便利な道具ですので、大きい子牛だと感じたときは、たとえ産道が十分に開いていても念のため滑車をセッティングしてもらうこともあります。滑車により生じる力が人力を超えているので、この道具の登場のおかげでお産にヒューマンパワー(人力)はあまり必要ではなくなりました。

そして代わりに重要になってきたのが失位(胎子の体が横を向いていたり、お尻から出ようとしていたりする変な胎位)の整復や肢や頭部への速やかなロープかけといったテクニック、そしてこのまま牽引しても良いのかどうかを決める判断力になってきたというわけです。そのポイントについては過去のコラム「滑車で牽引するときの注意点シリーズ」に掲載されておりますので復習も兼ねてこの機会に併せてご覧ください。

|