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前村達矢のコラム
乳房炎について考える⑪

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2021年11月19日

 今回からは乳房炎の診断について、現場でスタッフさんや獣医師が行う方法についてお話していければと思います。

 まずは乳房の観察や触診です。これまでにお話してきたように乳房炎にかかった牛の乳房は、細菌感染に伴う炎症反応によって熱感や腫脹が起こります。また、組織の瘢痕化が起こることによって、乳房が固くなったりいびつになったりもします。乳房炎の発見の為には、このような変化が起きていないか4つの乳房それぞれを調べていく必要があります。

 これらを調べた上で乳房炎が疑われる場合には、次に乳汁を絞ってみて異常(変な色をしていないか、凝塊あるいは水っぽくないか)がないかチェックする必要があります。現場で搾乳を担当されている方は、前絞りの工程で確認されている部分ですね。
ちなみに、前絞りには異常乳の検出という目的以外にも搾乳前の細菌排出や泌乳刺激などの目的あります。この泌乳刺激が搾乳量UPや搾乳によるダメージを減らす上でとても重要なんです。その理由としては、前絞りによる泌乳刺激から1~1.5分後の時点で射乳を促すホルモンであるオキシトシンの濃度がピークに達することが関係しています。オキシトシン濃度がピークに達した直後に乳量もすぐに上がるために、このタイミングのミルカー装着が搾乳量や搾乳時間の上でベストと考えられています。


図:オホーツクNOSAI HPより引用

 反対に、搾乳刺激がなかったりミルカー装着が遅れた場合には、搾乳量の減少や過搾乳といった問題が起きてしまうのです。

続く

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