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笹崎直哉のコラム
生後1週間以内を目安にチェックしたいこと その3

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2021年11月9日

 前回は「肋骨骨折」に関して私の臨床経験を含め詳しく紹介させていただきました。今回は子牛の臍に関して農家さん自身で実際に取り組んでいる事例をお話しようと思います。とても良い取り組みだと思ったので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

 今回紹介するのは生後1週間程度で母子分離し、人工哺育を行っている一貫経営の農家さんです。こちらの農場では母子分離時(生後1週間程度)に臍の触診を実施していて、異常があるときに限り、かかりつけの先生に診察を依頼するということを習慣化されています。蓮沼獣医師の臍動脈閉鎖不全に関するコラム(臍動脈閉鎖不全 その1~その4)でも記載されているように、最近では臍帯炎、臍ヘルニア、臍動脈遺残、臍静脈遺残、尿膜管遺残のほかに臍動脈閉鎖不全のような重度貧血、脱水を伴うことがある症例に出会っています。したがって臍関連の疾患はその後の牛さんの生産性を考慮すると、侮れない重要な疾患です。やはり肋骨骨折と同様に早期発見、早期治療、隔離処置など意識したいです。
 さて脱線しましたが、こちらの農場では臍の触診時に臍ヘルニアだった場合、そのヘルニア輪(穴)のサイズやヘルニア嚢の状態を確認して、場合によってはバンドを腹部に巻いて

 固定をしているとのことでした。またバンドは網目状なので、オスでも排尿に困らず安心とのことでした。基本的にはヘルニア輪のサイズが指1~2本分であれば、無処置、経過観察とするようですが、3~4指幅であれば腹巻きとして、バンドを装着し定期的に再診を組んで経過をおっていくとのことでした。農家さんは「比較的よく治り、効果を実感している」とのことでした。個人的にはしっかりと治る要因は「より早いタイミングで臍を触診し、治療を行っていること」だと思います。意外にも農家さん主体で臍のチェックをルーチンワークとして行っている農場は少ないのではないかと思います。生後3日目の鉄剤注射や子牛の引っ越しなど何かの作業のついでで構いませんので、子牛の臍のチェックを習慣化してみてはいかがでしょうか。

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