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前村達矢のコラム
乳房炎について考える⑤

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2021年10月8日

 前回に引き続き、乳房炎の感染を牛はどのように防いでいるのかというお話をしていきます。

 乳頭管を塞いでいる栓のような構造を突破して乳房内に侵入する細菌に対しては、乳汁に含まれる白血球が感染防御の鍵となります。 
 白血球とは病気になった際病原体を倒そうとする抵抗力としてどんどんと増えていくものですが、まだ病原体に感染していない乳房の乳汁中にも10万個/ml以下の濃度で含まれており、常に病原体の侵入に備えているのです。いざ、病原体が乳汁中に侵入して際にはここから更に数を増やして抵抗しますが、急性乳房炎の場合には100万個/ml以上の濃度に達することもあります。
 また、このように乳汁中の白血球濃度が上がるのには通常12〜24時間かかるとされています。しかし大腸菌性乳房炎を引き起こすEscherichia coliと呼ばれる細菌などではより短い時間で白血球が増殖すると言われています。

 牛がもつ感染防御の話をしていたつもりが徐々に不穏な話になってきてしまいました。
 病原体を倒してくれる白血球ですが、お察しの通り、”より多くより速く”というのもまた大きな問題なんです。

続く

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