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笹崎直哉のコラム
肥育雌牛の尿検査

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2021年9月21日

 久しぶりの投稿になります。8月末からは夜間診療が多く、睡眠不足になりがちな笹崎です。ちなみに夜間は難産で呼ばれることが多く(経膣分娩不可となり、やむを得ず帝王切開術を行い胎子を娩出した症例もありました)、新人の藤田獣医師と一緒に眠い目を擦りながら対応してきました。最近は藤田獣医師も自信がついたのか、私よりも先に農場に着いた場合、せっせと準備し介助進めてくれるので頼りになっています。

 さて今回は尿検査のお話です。ここ最近の症例を紹介しながら進めていきますね。
 肥育農家さんで「23ヵ月齢雌牛の食欲が落ちている」とのことで往診しました。該牛は発熱し体温は40度を超えていましたが、直腸検査で異常所見はなく、聴診しても気になるところがなく診断がつきませんでした。
 そこで血液検査を実施したところ、血液生化学検査項目のうち2つが気になりました。

 ◎尿素窒素(BUN):40.7 mg / dl
 ◎クレアチニン:3.08 mg / dl
 (ヘマトクリット値:34.7 %)

 この2つの項目が高値でしたので尿路(尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道など)系の病気を疑いました。なお脱水所見がある場合、血液濃縮によりこれらの項目は通常時より高値になりますが、ヘマトクリット値の結果より脱水は否定できます。
 これでアプローチすべきところが血液検査によって分かったので次のアクションにうつります。尿路系の疾患といったら腎炎、膀胱炎、尿石症などを思い浮かべます。欲をいえば感染性か非感染(代謝性)かを判定できればベターです。翌日はスピッツ管をもって採尿を実施しました。初診時の直腸検査で膀胱が張っていたり、膀胱内における結石の貯留などの所見はとれず、採った尿の色調も問題ありませんでした。もちろん少量頻回尿排出、持続挙尾、陰毛結石付着なども確認できませんでした。

 さて実際に採った尿で何をしていきましょう。主に2つ、アクションをしました。まず尿検査試験紙を用いて尿潜血、ケトン体、ブドウ糖、蛋白質、pHをチェックしました。

 試験紙の1番上の尿潜血と上から4番目の尿蛋白が特に反応しています。pHは7.5~8.0程度です。高値ではなさそうですね。肉眼では尿に血液が混じっているようにみえなかったので、潜血反応はとても意外でした。
 つぎに遠心分離機を行い、その尿沈査を顕微鏡で眺めました。やはり赤血球が散見されましたが、以下のように尿路結石の原因となるモノを発見しました。

 形状等を見る限りストルバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム結晶)と判定しました。そこまで多いわけではなかったのですが、この結晶が悪さをしているかもしれないと予想しました。また染色もしましたが、白血球と膀胱上皮を発見しました。他には細菌(桿菌や球菌)も見つけましたが、今回は自然排尿を促して採尿したので、雑菌が混じってしまった可能性があります。なので細菌感染の有無に関しては判定が難しいです。

 今回の症例に関しては腎臓、尿管、膀胱、尿道のうち、どこが中心となり痛んでいるのかが分かりませんが、とにかく結石を溶かしてスッキリさせてあげることを目的として、塩化アンモニウムを投与することにしました。塩化アンモニウムは、塩素イオンとアンモニウムイオンの2つに分かれ、アンモニウムイオンは肝臓で代謝され尿素となります。一方塩素イオンは血中に残り、血液と尿のpHを下げてくれるので、結果的に結石を溶解してくれます。

 また細菌などの感染性疾患の可能性も考慮し抗生物質、さらには炎症を抑えるため消炎剤も投与することにしました。

 1週間~2週間後にもう一度採血を実施し、血液検査を予定しています。さて尿素窒素、クレアチニンの数値は下がるでしょうか。
 どうか下がりますように。

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