(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
笹崎直哉のコラム
鼻環装着とその後のトラブル

コラム一覧に戻る

2021年8月31日

 先日体脂肪率を測定してきました。結果は13.5%でした。また皮下脂肪、内臓脂肪の割合に偏りがなく、バランスがとれているとの嬉しい結果でした。私の年齢(29歳)と体重(56.5kg)と身長(167cm)からすると体脂肪率は15~20%が標準値とされているので、低値ではありますが30歳になれば年々基礎代謝が低下と思いますので今後もこまめに運動し、暴飲暴食をしないよう意識しなければなりません。いつまでも健康でいたいなぁ。

 さて今回のコラムは鼻環装着に関するお話です。
 半年前のことでした。農家さんから「牛に鼻環を付けたが、出血してきたし元気が出ない」との稟告を受け往診しました。鼻環装着に伴う細菌の感染症かなと推測し、取り急ぎ鼻環を外しオモテ(頭絡)をしてもらうよう伝えつつ現場に向かいました。
 肉眼での出血量はそこまでひどくなかったのですが、じわじわと鼻腔粘膜からの出血がみられ、粘膜そのものがやや腫れ上がっていました。

 さらに「膿が混じった血の塊を出すこともある」ということでした。牛床にもそれらしきものを散見、、、。

 農家さんは「鼻環の装着位置が通常よりも奧だったかもしれない」とおっしゃっていました。鼻環装着に伴ってできる刺創から細菌が侵入し、悪さをしたのでしょう。体温も40℃を超え、食欲も低下していました。
 処置は鼻腔内を生理食塩水で綺麗に洗浄しイソジンで消毒するという、至ってシンプルな方法です。またβラクタム系の抗生物質とステロイドを静脈内注射して対応しました。
 翌日になると症状が改善していました。熱も下がり出血もほとんど治まっていました。

 2日目は初診で行った治療を継続して実施し、3日目はステロイド剤を中止し抗生物質のみ投与しました。
 すると翌日、残念なことに再熱発し、出血もみられました。どうやらステロイドで症状を抑えていただけで、肝心な細菌を叩くということができていなかったようです。思い切って抗生物質をキノロン系に変更しました。叩く細菌のターゲットをグラム陽性菌からグラム陰性菌へ切り替えたのです。すると翌日はしっかり熱は下がり、鼻腔粘膜の状態も改善していました。「これで大元を叩けた」と安心しましたが、油断は禁物です。再発しないようしばらくキノロン系の抗生物質の投与を続けました。5日間ほど続けると鼻腔内は健康な牛さん同様、腫れもなくスッキリしてきました。

 今回の症例から鼻環装着によって感染症につながることもあるので、正しい位置でより衛生的な環境下で実施することが重要だと改めて実感しました。

|