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前村達矢のコラム
乳房炎について考える②

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2021年9月17日

 今回からは乳房炎の発症原理について考えていきたいと思います。

 乳房炎の発症がはっきり分かりやすいのは、下の写真のように乳房の腫脹が著しいものでしょうか(アップで撮りすぎました、、)。他にも乳房がガチガチに張ってしまったり赤くなったり、異常乳が出ていることに気づいて発見されるケースも多いかと思います。

 このような状態になってしまった乳房の中では一体何が起きているのでしょうか?

 このことを考えるためには、まず乳房の構造や正常な泌乳の仕組みを理解すると分かりやすいかと思います。

 牛の乳房は、下の絵のように4つに区切られた構造になっています。左右には乳房提靭帯、前後には中隔結合組織で区切られ、それぞれの乳房はほぼ個別の血管系、神経系、靭帯をもっています。

 このように、乳房は構造的そして機能的にも独立した組織のため、写真のようにひとつの乳房だけがドーンと発症したりするのです。

 ちなみに、乳房の重さは700kgの成牛だと70kg程言われています。(どうでも良いですが私の体重もこれくらいです笑)これほどの重さを支えているのは、先にお話した乳房提靭帯を含む3つの靭帯です。
 乳房が上に引き締まっている牛もいれば、ダランと下がっている牛もいると思いますが、この靭帯の緩みも影響しているのでしょう。

 今回は、乳房炎の発症を理解するための乳房のおおまかな構造についての話でした。次回はひとつひとつの乳房についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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