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松本大策のコラム
耐性菌やばっ!

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2021年8月23日

 コロナウイルス感染症、一向に落ち着く気配すらありませんね。僕も栃木にアパートを借りて住み込んで診療所を構えたのに、農家さん向けの勉強会の計画も、お披露目の宴会も消滅。なかなか診療が増えません😢

 ところで、みなさんの農場は下痢で困ってはいませんか?
 大規模農場で、「下痢が多発して何を注射しても効果が無い」ということで、改善を依頼されました。
 まずは、便を採取して下痢の原因になっているばい菌の種類と、それらのばい菌には、どの抗生物質が、どのくらい効果があるのかを検査しました。結果がこちらです。

 

 左側に見つかったばい菌の種類が書いてあり、右側の①、②…とある列の下にSとかRと書いてあるのは、左側の列の抗生物質が効いているかの判定です。Sは効果あり、Rは耐性で効果なし、と言う意味です。
 これを見て驚いたのは、いろんな原因菌においてかなりの抗生物質耐性が起こっており、下痢の原因として出てきたすべての細菌に効果のある抗生物質は存在しないのです。(クラブラン酸アモキサシリンは動物で認可されていません。こういう人間用の抗生物質は使用してはいけません。動物で耐性菌を作ってしまうと人間のドクターに迷惑をかけるし、ひいては自分の首を絞めることになります。)

 そこで下痢対策の戦略としては、いくつかの抗生物質で組み合わせるカクテル療法で行くか?と言うことを考えますが、この農場では別の戦略を立てました。
 それは「生菌剤」のドカやりです。ビオスリーやアースジェネターなどの生菌剤には、いわゆる「善玉菌」がたくさん入っています。ここで、抗生物質とは何なのかを再度考えると、「ばい菌が他のばい菌をやっつけるために出す物質」です。ですから、生菌剤に含まれる善玉菌も「抗生物質」を出している可能性が考えられます。人間の科学力や経済的開発力では見つけられていない抗生物質が何万とあると思います。そういう「未知の抗生物質」を生菌剤が出しているのかも?と考えると、抗生物質を使わなくとも生菌剤のドカやりでやってみよう!という気になるでしょ?
 実際いくつかの農場でアースジェネターを10倍量与え続けることで、注射の必要な下痢がほとんど出なくなったのです。コストもたった1日120円。最近の抗生物質と比べてもお得です。これらの試験をしている農場では、抗生物質の使用を極端に制限して、1年後の感受性を調べてみようと考えています。

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