(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
江頭潤将のコラム
No.45 家畜の改良技術 その32 OPU編

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2021年8月13日

○胚発生
 精子と卵子の受精が完了すると胚発生が始まります。教科書的には1つの受精卵から個体ができるまでの過程を胚発生といいますが、牛のOPU-IVFでは移植する段階である胚盤胞または拡張胚盤胞に発生するまで7~8日間ほど体外発生培養を行います。つまり、人が体外で牛の胚を操作できるのは和牛で285日といわれる妊娠期間のうち1週間程度なのです。

 媒精が終了すると、役目を終えた卵丘細胞は発生培養では不要となるので除去する必要があります。卵丘細胞を除去する作業を「裸化(らか)」といいます。やったことがある人にはわかると思いますが、この作業はけっこう大変で慣れないうちは非常に時間がかかります。卵丘細胞を1つ残さずきれいに除去することができればつるんとしたきれいな胚になり発生にも余計な影響を与えません。
 発生培養を始めると媒精開始から約1日後に細胞分裂によって細胞の数が1つから2つに増えますが、これを卵割といいます。卵割が進んでいくと2細胞→4細胞→8細胞→16細胞→32細胞といったように細胞数がどんどん増えていきます。これ以上は細胞数を数えられなくなるので桑実胚(そうじつはい)と呼びます。桑実胚からは収縮桑実胚→初期胚盤胞→胚盤胞(はいばんほう)→拡張胚盤胞というようにステージが変化していきます。体内採卵では通常、人工授精から7日後に胚を回収するので収縮桑実胚~拡張胚盤胞までが採取されます。ちなみに、現在シェパードで実施している採卵プログラムだと収縮桑実胚が採取されることが多いです。OPU-IVFでは培養後7~8日の胚盤胞または拡張胚盤胞で新鮮胚移植したり凍結保存したりします。

 今回は胚の画像を紹介することができませんでしたので次回、画像と共にOPU-IVFの流れを再確認したいと思います。

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