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笹崎直哉のコラム
カルシウムのお話

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2021年8月10日

 先日生まれて初めて中耳炎になりました。左耳が難聴となり、耳鼻科の先生にみてもらい発覚しました。「中耳に液体が溜まっている」とのことでネブライザーをしたり、鼻づまりや鼻炎に効く漢方薬、抗生剤を処方してもらいました。1週間経過すると中耳に貯留した滲出液が耳管咽頭口から抜けはじめました。それがきっかけで音が聞こえはじめ、その後完治しました。滲出液が溜まったままだと、鼓膜に少し穴をあけて吸引しなければならないと言われていたので再診結果が分かるまで緊張していました。牛さんも中耳炎になると難聴になるのかなぁと想像しながら1週間薬を飲み続けていました。中耳炎になってしまった牛さんの気持ちが少し分かるようになった気がします。でももう2度と中耳炎になりたくないですね。

 夏は特に日差しが強いですね。木陰にいるだけで体感温度はかなり違います。夏は特によい印象がない日光ですが、メリットもあるんです。日光を浴びると紫外線の影響でビタミンDが作られるのです。ビタミンDは食べ物から取り入れたり、注射や添加剤などで補うことが多いイメージですが、実は日光に当たることで体内でビタミンDが合成されるのです。でもどのくらい日光浴すればどれほどのビタミンDが作られるのか、というのははっきり分かりませんし、夏季は熱中症、熱射病が怖いので安易に長時間日光浴させることができませんね。
 さてビタミンDの効果・効能ですが、肝臓や腎臓などの臓器で代謝され活性型ビタミンDとなった後、本領を発揮してくれます。主に腸からのカルシウム、リンの吸収促進、それから腎臓(腎尿細管)におけるCa2+の再吸収を促進してくれます。つまり血中カルシウム濃度を一定に保つ効果が期待できるのです。さらに骨へのカルシウム沈着を促し、骨組織の効果作用を高める効果があります。なので成牛のみならず子牛でも用法や用量を守り、過剰投与にならなければカルシウムの補充にもってこいのビタミンになるわけです。個人的にビタミンDは注射した後、翌日からグッと効果が表れるような即効性のあるビタミンという印象はあまりありませんが、一方で長期でみたときに血中のカルシウム濃度が上がって安定していたり、牛さんの症状が改善していたりなど効果を実感しています。予防的な考え方としてお産前後の低カルシウム血症を防ぐためビタミンDを与えている方も比較的多いように思います。気になる方は試してみるとよいと思います~。

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