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松本大策のコラム
大腸菌姓乳房炎が多発してます!

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2021年7月26日

 いやあ、暑い!那須塩原と言ったら天皇陛下の避暑地じゃなかったっけ?っていうくらい暑い日が続きますが、みなさんのところはいかがですか?ニュースや気象情報で見る限り日本全国すっごい猛暑ですよね?沖縄が一番気温が低い地域になってしまっています。これはもう異常気象と言うより、こういう気候に変わった、と言うべきなのでしょうね。

 ところで、この高温多湿の影響で、「大腸菌性乳房炎:別名急性乳房炎(僕らが学生の頃は甚急性乳房炎と習いました)」がとても増えています。
 また通常発生しない「乾乳期」のお母さんでも発生しています。この乳房炎にかかると、大腸菌の内毒素(エンドトキシン)が全身に悪さをして、乳房や陰門など様々な場所に浮腫を起こします。それだけでなく、エンドトキシンショックを起こして座り込むと、ほぼ助かる見込みがない、という恐ろしい病気なのです。それから薬の選択もむずかしいのです。少し前までは、ニューキノロン系と呼ばれるバイトリルやビクタスが特効薬でしたが最近耐性菌が出てきていますし、ペニシリンや第1、第2世代のセフェム系抗生物質を使うと、大腸菌から毒素がドッと出て逆効果になってしますのです。

 今酪農地帯にいますからこのような症例にたくさん出会うことができるようになりました。この「大腸菌」と言われる極めてポピュラーなばい菌は、子牛の下痢の原因菌としても、多くの割合を占めていますし、毒素を出すのも同じです。
 またいろんな農場でうんちを検査してみると、多剤耐性菌も増えてきていて、ニューキノロンもアンピシリンも効かなくなってきているのです。

 そういう農場では、消毒の徹底、生菌剤による「場の菌叢」の制圧が効果的になってきます。子牛の下痢の続く農場では、下痢団子と称してアースジェネターやビオスリー(この2つは相性もよいのです)を50から100g、吸着剤としてネッカリッチ20g、を併せて食べさせてもらい、抗生物質は中止する、という方針で対処しています。

 酪農場でも、餌に生菌剤を混ぜることで、場の菌叢を制圧し大腸菌をおとなしくさせることができると考えています(共済勤務時代に、試験して実績有り)。

 抗生物質で叩く、と言う考え方だけでは対処しきれなくなっているのだと思うのです。ビタミンやミネラル、牛さんの胃袋に負担のかからない餌、給餌時間、きれいな水、そして健全な細菌叢、そういったもので健康な牛さんを育てておくと、子牛もお母さんも病気知らずになりますよ。きっと!

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