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松本大策のコラム
雌の尿石症

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2021年7月12日

 今はそうでもありませんが、去勢牛にとっては、尿石症というのは大変恐ろしい病気でした。おしっこが出ない苦しみを考えていただければ、みなさんにも分かっていただけると思いますが、牛さんが苦しいだけでなく、気づくのが遅れて膀胱破裂でもしてしまったら、下手をすると枝肉全部廃棄です。
 去勢牛では、尿道に石が詰まるので、ジタバタしておなかを蹴ったりして気づくことが多いのですが、その時点で気づかなかった場合、膀胱が破裂してしまうと「尿石」と気がつかずに、起立不能の方向で診療が進むと、その間に全身に尿毒(BUN)が廻って全部廃棄になってしまいます。

 さて、去勢牛の尿石のお話が長くなりましたが、今回のお話は「雌の尿石症」です。雌では、膀胱からの尿道が短く、また太いので、ここに石が詰まることはまずありません。それで、あまり雌での尿石症は注目されていないのですが、注意深く診察していると、元気や食欲が低下している、という牛さんの中に、雌の尿石症が見つかることがあります。
 雌の尿石症の場合、腎臓の腎盤(人で言う腎盂)であったり、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ「尿管」に尿結石が詰まることが多いです。
 と、まあ、このあたりはよくお話もしますし、以前コラムにも書いていますが、今回2頭ほど、尿がタラタラで元気・食欲のなかった雌の尿石症を治療したので具体的にその方法を書いておこうと思います。簡易試験紙でBUNが+~++(おしっこがたらたらでも出ている間はあまり上がってきません)でしたが、それでも腹を蹴る動作はみられません。よく、尻尾をピンと上に立てて走り回る雌の尿石症患畜を見ますが、その症状もありませんでした。ただ、おしっこがタラタラで食欲なし。このタイプだと、砂状の石が炎症の時に出てくるフィブリン(傷口を固める糊みたいなやつ)で固まっていることも多いので、まず高張利尿といって50%のブドウ糖を1リットル、リンゲルを1リットル、その中にフィブリンを減らすデキサメサゾンと結石のせいで感染を起こしているのに備えて抗生物質、それから制限アミノ酸(タンパク質の中で最も足りないアミノ酸の量でタンパク質の利用料が決まる)であるメチオニンを補う意味でレバチオニン100mlを連日補液しながら、塩化アンモニウム製剤(ゼノストン:ゼノアック)を飲ませました。1週間程度で少しずつ尿が太くなり、2週間程度で尿の量が通常に回復したので、餌にウロストンの添加をしてもらいながら治療終了です。
 治療開始時点から、トウモロフレークを与えて尿phを低下させるようにしておくと再発もありませんよ。

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