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松本大策のコラム
夏場の空胎牛に少しだけ手助け

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2021年7月5日

 みなさん、大雨の被害も広がっているようです。みなさんのところでは大丈夫ですか?十分お気をつけくださいね。

 ところで、気象庁によると、今年は梅雨明けから大変な猛暑になるということです。この時期、繁殖牛も受胎率が低下してしまうことが多いですよね?そこで、今回は、暑さに参っているお母さん牛に少しだけお手伝いして、受胎率を上げる工夫をしてみましょう。

 まず、暑いと何が起こるか?から少し考えてみましょう。
 暑さによって、お母さん牛さんの深部体温が上がります。そのときにまずいことが二つほど考えられます。

 一つ目は肝臓についてです。肝臓は「酵素」の力で解毒したり、血中アンモニアを分解したり、ホルモンの材料を作ったり、使用済みホルモンの分解をしてくれます。ここで問題なのが、「酵素」には至適温度というものがあり、牛さんの深部体温、特に肝臓の温度が上昇すると「酵素」の働きが悪くなるのです。その結果、肝臓自体も「夏バテ」を起こしてしまいます。
 そうなると、解毒もアンモニアの除去も、ホルモン関係の大切な働きも低下してしまいます。そこで、少しでも肝臓に元気に働いてもらえるように、夏の栄養剤を与えてあげましょう。僕は、梅雨明けの頃に、ビタミンADE(ゼノビタンとかフォルテなど)を5ml+ビタミンE注10ml+パンカル注10mlを皮下注射して、リカバリーMを100g×3日ほど与えていただいています。これだけでも受胎率は変わってきますよ。

 二つ目は、お母さん牛の深部体温が上がることによって「子宮の中」の温度も上昇することです。実は、精子は高温に弱いために、子宮内の温度が上昇すると活性が低下して、わかりやすく言うと死んでしまいます。これでは受胎することはできません。
 そこで、受精予定のお母さんを水で冷やしてしっかりタオルなどで拭き上げ(水の層が残ったままだと、そこが断熱材になって余計熱がたまるのです)、涼しいところにつないでおくのです。
 この方法は、特に暑い南西諸島でやってもらって効果があった方法です。みなさんも夏場の受胎率が低下するようでしたら、試してみませんか?

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