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戸田克樹のコラム
第339話「ハエが送る重要なメッセージ④~すっぱいにおいに寄ってくる?~」

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2021年6月23日

ついに息子が風呂場でう〇ちをしました。浴槽を洗い終わって振り返ると、それまでなかった茶色い物体が目の前に…。何が起こったか分からず思考停止に陥り、一瞬その物体をただただ見つめていました。「そっか。出ちゃったのか。」と納得し、やっと片付けという行為に移行。パニックを起こすと人間は完全に止まってしまうということを学びました。

さて、ハエが多いということは牛舎内のにおい(アンモニア臭)が強いということです。「くさい」ことは不快な気持ちになりますが、それだけでなく、強い臭気は鼻粘膜などの呼吸器粘膜を刺激し炎症を起こしてしまいます。細胞が損傷を受けると粘液の分泌量が減少するとともに局所免疫も弱まるため、病原体の侵入も容易になってしまいます。ハエがわんさか飛び回っている牧場ではハエが連れてくる病原体も増えていくため、疾病リスクも上がります。やはりハエの絶対数は少ない方が気持ちの面でも、疾病リスクを下げるためにもよさそうです。

ところで、衰弱している牛にハエが群がる状況に遭遇したことはありませんか?あくまで私見ですが、体から出るケトン臭がハエを引き付けているのではないかと考えています。ミルクやエサを食べられない状態が続くと血糖値が下がります。脳や筋の主要なエネルギー源である糖が少なくなると、生命を維持するために体脂肪の分解が進み、肝臓でケトン体(糖に代わるエネルギー源)が作られ血中へと送られます。アセト酢酸やアセトンがケトン体の代表なのですが、これらには特有の「酸っぱいにおい」があります。このにおいをかぎつけてハエが寄ってくるのでは?と考えています。治療中の牛にハエが異常に集まってくる場合は体内のエネルギー(糖)不足を補正してあげるために、点滴などで糖分をしっかりと補給してあげた方がよいかもしれません。

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