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笹崎直哉のコラム
湿布コーナー その2

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2021年6月8日

 牛さんの診療で使う湿布薬には軟膏の他にスプレーで噴霧するタイプもあり、湿布薬ひとつとっても種類は様々です。

 さて本題の冷湿布、温湿布ですね。牛さんの診療で冷湿布、温湿布について書かれている教科書や資料をあさってみると家畜共済の診療指針(全国農業共済協会 発行)には乳房炎治療の補助療法として「発病初期には、頻回搾乳とともに冷湿布、以降は温湿布を行う。再発を繰り返す慢性乳房炎に対して温湿布を実施すると予防効果が認めらる症例もある」との記載がありました。人間でも一般的に発症初期や急性期には冷湿布、慢性期には温湿布が用いるようですが、牛さんも同様に急性期、慢性期での使い分けがベーシックのようですね。

 ここで牛さんで使用する湿布薬の成分を調べてみると、ほとんどの湿布薬に消炎、鎮痛を目的としたサリチル酸メチルが含まれていました。冷湿布はサリチル酸メチルの他にメントールやカンフルなどの成分が含まれている一方、温湿布にはトウガラシエキスの他にメントールやカンフルなどが混合されたものもありました。

 ここで「皮膚温度を上げたり、下げたりする効果が本当にあるのか」という疑問が生まれました。調べてみると、どうやら冷湿布も温湿布も温感、冷感刺激効果はあるものの、氷で患部を冷やしたり、カイロで温めたりするレベルでの温度変化は期待できないようです。しかし温感、冷感刺激によって痛みに対する感じ方が軽減され、結果的に痛みをやわらげるため湿布薬に温感を刺激する成分が含まれていることは必要不可欠なんだと実感しました。

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