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江頭潤将のコラム
No.34 家畜の改良技術 その27 OPU編

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2021年5月21日

〇体外受精
 前回まで体内成熟OPUを紹介しました。今回からまた通常のOPUの続きです。未成熟卵子を採取したあとは約1日ほど成熟培養をすることで成熟卵子が得られます。次の作業として体外受精( in vitro fertilization:IVF)を行います。

 体外受精と聞くと皆さんはどのようなイメージが浮かびますでしょうか?よくテレビで出てくるような、卵子に針を刺して精子を注入するシーンが浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。

 この技術は「顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection:ICSI/イクシィ」と呼ばれるもので今回紹介する体外受精とは異なるものです。ICSIは主にヒトの生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology:ART)や実験動物の研究などでよく使われます。
 ところで、人工授精や顕微授精は“授”、体外受精や受精卵は“受”という漢字が使われますがこの授精と受精の違いをご存知でしょうか?“授”という漢字はてへんが使われています。つまり、卵子と精子が出会うことが人工的かどうかという違いになります。人工授精は人が精子を子宮に注入し、顕微授精は卵子に直接1つの精子を注入します。一方、体外受精ではシャーレの中で卵子と精子が自然に近い状態で出会うことによって受精が成立します。よって、体外受精には“受”の漢字があてられています。

 牛のOPUでは卵子と精子を体外で受精させる技術の中でも「媒精」という方法を使用し、体外受精といえば一般的にこちらを指します(いわゆるConventional-IVF)。本題の体外受精の説明に入りたいところですが、前置きが長くなってしまいましたので次回に続きます・・・。

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