2021年5月19日 肺炎や化膿症の牛、さらには臨床上とくに問題ないにも関わらず血液検査で白血球数が基準値を超えていて何らかの感染が疑われる牛などに対する治療法のひとつとして、抗生剤を投与を選択します。そんなとき、いくつか種類の異なる抗生剤を使用してみたがどれも効果が今一つというケースに遭遇したことはありませんか。こういうときに、私はペニシリンを使うことが多いです。 ペニシリンと聞くと 歴史のある薬で新鮮味がないせいか、「あまり効かない」というイメージをもっている方もいらっしゃるかもしれません。しかしこのペニシリンは使い方次第では非常に頼もしい薬剤へと変貌を遂げます。 ポイントは1日2回、もしくは3回投与するということです。 時間依存性というワードをご存知でしょうか。ペニシリンは時間依存性の抗生剤で、血中半減期(血液中の薬剤濃度が半分にまで減ってしまう時間)が短い薬剤です。そのため、朝と夕方、欲をいえば朝、昼、夜というように1日2回から3回の投与を実施すると、体内の薬剤濃度を高く維持できるので、最小発育阻止濃度(細菌の発育を阻止できる最小の薬剤濃度)を超えた血中濃度を維持できるようになります。 実際、このやり方で症状が落ち着いたり、目もあてられないようなひどい化膿症が治っていったりしたケースは多々あります。ずいぶんと昔からある薬ですが、治療でペニシリンを使用するときはぜひ、1日2度打ち、もしくは3度打ちを試してみてはいかがでしょうか。 前の記事 第333話「隔離という第3の選択肢」 | 次の記事 第335話「保定の位置はどうでしょう」 |