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見た目にだまされるんじゃないぞうー! |
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2021年5月10日
ようやく栃木の生活にも慣れてきた松本です。
今回は、以前少しお話ししたかもしれませんが、新人の頃、あるいは農家さんがよくやっちゃう失敗の一つについてのお話です。
写真も撮っといたらよかったのですが、まずはビデオの最初の方を見てください。
表面を角か何かでカスったきずかな?みたいに見えるでしょ?
こういうときは、必ず周囲の腫れだとか、かさぶたを少しがしてみるとかの確認をしましょう。表面だけなら、ヨーチンでもかけとけばよいのですが、こういう傷の場合、内部に化膿ではなく壊疽が広がっていることがあるのです。
化膿の場合は、化膿菌が傷に感染しているのですが、壊疽というのはクロストリジウムなどの嫌気性菌といわれる酸素を嫌うばい菌の感染によって、化膿ではなく体組織が腐っていくのです。
気づかないで放置していると、壊疽はどんどん広がります。ビデオの症例でも内腔は直径25~30cmもありました。そして運が悪いと、血液中に嫌気性菌が進出して敗血症を起こして死んでしまうこともあるのです。
今回の症例も、切開で傷口を広げて、中を鋭匙(「えいひ」と言って小さなスプーンみたいな器具ですが、スプーンの縁がナイフのように鋭くなっているのです)でえぐり取りながら、ヨードガーゼを充填して、翌日ガーゼを取り除いて再び鋭匙でえぐって...、ということを繰り返しながら、毎日ペニシリンを打ちました。
できれば、傷の内部が感染にきれいになるまでやりたいのですが、僕たち獣医師がやると、お金もかかりますから、途中で農家さんにお願いして引き継いでいただくこともあります。
みなさんも見かけにだまされて、きれいなお姉さんやいい男にだまされたことがあるでしょ?傷口にまでだまされちゃダメですよ(笑)
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