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松本大策のコラム
ナックリングに関して思うこと

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2021年4月30日

 松本です。栃木に来てはや1ヶ月。毎日ファミリーマートが僕のために晩ご飯のお弁当を作ってくれます。慣れない土地では疲れるものですね。ぎっくり腰もやっちゃったし。

 ところで、みなさんは「ナックリング」ってご存じですか?子牛の足首が伸ばせなくて、通常関節が曲がる方向ではありますが、くの字に曲がっているもので、重症の子は前膝の関節も同じ方向へ曲がっています。


骨軟症

(違いも見てね)


ナックリング

↓ナックリングのオペとギプス固定併用例

 今日はこちらのコンサル先で「ナックリング」が多発する農場について調べてみたので、少し感じていることをお話ししようと思います。
 その農場では、出生後肢のナックリングが多発するので、妊娠中の飼養管理に問題があるのかな?と考えて分娩前1ヶ月の母牛の血液を5頭ほど採って、アミノ酸のバランスを調べてみました。するとトリプトファンというアミノ酸だけが、正常と言われる母牛の1/3しかありませんでした。
 通常牛さんの制限アミノ酸といえば、メチオニン、リジン、その次にトリプトファンでしょうか。しかし、この農場では、メチオニンやリジンはほぼ正常な農場と変わらないのに、トリプトファンだけがとても少なかったのです。

 牛さんのアミノ酸の大部分は、第一胃で食べ物から組み替えられる「菌体タンパク」由来のもので、元々の餌のアミノ酸バランスとは異なりますから、もしかしたら第一胃細菌叢が悪いのかな?と考えて、第一胃の細菌叢を整えるために生菌剤を給与していただくことになりました。こちらは始まったばかりですので、結果を見ていつかご報告します。

 ただ、1例しかまだないのですが、子牛のナックリングに人用のアミノ酸製剤を点滴してタンパク同化ホルモンを使用したところ、4日ほどでほぼ改善した子がいます。みなさんのご意見とかお考えを聞かせていただければ幸いです。

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