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蓮沼浩のコラム
第664話:アナフィラキシー その5

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2021年5月6日

 5月に入り、だんだん明るい時間が長くなってきています。すこしずつ夏至に近づいてきています。せっかく明るいのだから、一日を今まで以上に有効に使っていきたいと思います。

 今回はアナフィラキシーの紹介の最終回になります。

 ◎持続する消化器症状
 腹部疝痛、嘔吐

 この「持続する消化器症状」というものは、実は小生あまりアナフィラキシーとして遭遇した実感がありません。抗生剤や駆虫薬を投与した後に下痢を発症する事例はあるのですが、これが厳密にアナフィラキシーなのかは判断が難しいところです。腸管や第一胃内の細菌叢が急激に変化した影響もあるかもしれません。しかし、目が腫れて下痢をするなど他のアナフィラキシーの症状と併発している事例はあります。単独での判断はかなり難しいかもしれません。

 腹部疝痛も非常に判断が難しい症状になります。おそらく腹部疝痛であるので、四肢集合姿勢を呈したり、伏臥して頸部伸直したり、横臥したりすると思うのですが、アナフィラキシーとして単独でこのような状態に遭遇した記憶がほとんどありません。嘔吐になると、さらに記憶がありません。持続する消化器症状や腹部疝痛、嘔吐が牛さんでみられた場合は、これからは意識してワクチン投与や抗菌薬などの投与を行っていないか確認していきたいと思っています。

 基本的に牛さんの臨床現場で遭遇するアナフィラキシーは、急性のものがほとんどのように感じます。小生の経験では、もちろん遅発性のアナフィラキシーもあるのですが、ほとんどの症例が処置後30分以内に起きている印象をもっています。診療やワクチン巡回で忙しい獣医さんはバタバタと処置が終わったら牧場を後にします。小生もバタバタしている時はすごいスピードで牧場を後にします。しかし、もしも時間のある時は、農家さんと一緒にお茶を飲んで、世間話をして、帰り際に処置をした牛さんをちょっと覗いてみるゆとりがあればいいですね。

 むかしから鹿児島では「ま、茶一杯(ちゃいっぺ)飲んでっきゃん!」といわれることが非常に多い地域です。この「茶一杯(ちゃいっぺ)」は鹿児島の文化だと思っています。「先生、飲んでっきゃん」とよく言われます。診療3分、茶飲ん話30分などということもザラです。小生など診療所の近くの農場で朝一発目の往診から「診療3分、茶飲ん話30分」をぶちかますこともあります。もちろん、ここの農場では過去にアナフィラキシーがでたことがあるので、その対策かと思いきや、診療する前からお茶を飲んでいることも多いので、なんだかよく訳がわかりません。どうであれ、処置をした牛さんの状態をしばらく後に確認することは非常に重要なことなので、処置後も農家さんは注意して観察するようにしてくださいね。

今週の動画「Hemorrhagic enteritis part 1  出血性腸炎(その1)」

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