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蓮沼浩のコラム
第663話:アナフィラキシー その4

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2021年4月22日

 小生は参加できなかったのですが、先日行われたヘラブナ釣りの例会の結果を聞くと、優勝者がなんと90歳の大ベテランの方でした。名だたる猛者達を押しのけての優勝。本当に凄いです。

 ◎循環器症状

 血圧低下、意識障害

 今回のコラムではアナフィラキシーの中の循環器障害を紹介したいと思います。この血圧低下と意識障害は症状が激しく、ベテラン獣医師でも本当に焦ります。簡単にどのような症状か説明いたしますと、基本的には医薬品を投与した牛さんが突然ぶっ倒れます。

 ワクチンなり抗生剤なりを投与し、保定を外して診療車に向かう途中、農家さんから「先生、なんかおかしか!!」との叫び声。

 はっと振り向くと、牛さんが意識を失い突然座り込んだり、倒れ込んだりした後に横倒しになります。あとは痙攣したり、クローリングという遊泳運動をしたり症状は様々。ガスが急激にはってくる場合もあります。牛さんの意識はなく、明らかに異常な状態。もちろん緊急事態なので、すぐさまアドレナリンの投与をしなくてはいけません。当然補液を実施するために血管確保もしないといけないのですが・・・血圧低下がひどいと、血管確保をしようと外頸静脈を駆血してもまったく血管が浮いてきません。非常に血管確保が難しい状態になっていることもあります。また、聴診器で心音を聴取しようとしても、心音を正確に聴取することもできません。心停止している場合もあります。

 何度も言いますが、速やかなアドレナリンの投与が必須です。そして状態をみながら必要に応じて再投与していきます。基本的にアドレナリンは筋肉注射で投与するのですが、症状が重い場合は静脈注射で投与する場合もあります。時間がたてばたつほど、全身の組織障害が進み、各組織に不可逆的な障害を起こす確率が上がります。一番障害をうけるのは酸素要求量の多い、脳になります。薬剤アナフィラキシーショックに起因する低酸素脳症は絶対に防がなくてはいけません。

 このような事例はほとんど発生することはないのですが、残念ながら本当に極々まれに発生することがあります。現場の獣医さんは、このような時にしっかりと対応できる体制を整えておく必要があります。

今週の動画「How to contorol a dangerous cow  危険な母牛の初乳の飲ませ方」

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